「玉葉、もう少し抑えた衣装にしてくれないか」

「あんなご立派なお国の王とお会いになるのですから……」

玉葉は柔らかな声音で言い諭した。
しかし陽子の苦笑いは変わらず、次の言葉を探す。

いやー、すでに巧を生き抜いた時の大変な格好で会ってしまっているし……

すでに見せるべき見栄も何も残っている気がしない。
それでも即位後の王なのだから、飾らねばならぬという気持ちも分からなくもないのだが。
でも今は作戦Sのせいでいつも飾っているのだから、今くらい(知人に会う時くらい)好んだ格好がしたい。
(作戦S=素敵少女王計画「その正体は神秘の審美眼を持つ少女!(トリプルS計画でも可)」)

「延王は華美をあまり好まれぬ御方だ。だから残念だけど(全然残念じゃないけど!)私もあまり派手な格好はしたくないんだよ」

「……では、主上の仰せの通りに」

「ありがとう、玉葉」

ため息混じりの玉葉の言葉、不満そうな(顔には出してないけど分かる)女官たちの雰囲気を感じつつ、陽子は笑った。
そりゃーもう晴れ晴れとした清々しい笑顔だった。
(やったーたまには肩の荷を下ろさないとヤッテランネー)





「……毎日、着飾っている?」

「そうなんです。毎日毎日違う衣装に身を包み、時には日に何度も着替えては女の美を追究しています」

呆気に取られたようにこちらを見てくる延王に、陽子はニコー!と輝く笑みを向けた。
まるでうら若き少女が恋の話をしている時のように明るい笑みなのだがなぜだろう、どことなく投げやりな雰囲気も感じる。
延王は『イヤ、陽子は投げやりな恋などしそうにないな……』などといらぬ思考に己を持って行かれそうになった。
しかしすぐに陽子の笑みの理由に思い至り、ニヤリと笑みを浮かべて陽子を眺める。

「ははは、もしや何か策あってのことか?」

「酷いお言葉ですね。私が着飾ることに執心しているのかもしれないですよ?」

「そのような物言いをしている内はまずありえんな。今は着飾っていないようだし……もしや俺を理由にしたのではあるまいな?」

「バレましたか。本日はお越し頂いて本当にありがとうございます」

これで今日一日はこの格好を貫いても大丈夫でしょう!

にこにこ笑う陽子に、延王もつられたように笑った。
当極して間もないというのに、陽子に変わった様子が無いので安心した。
(しかしそれは疑念すら呼び覚ますのだが)

陽子は本当にこのことについて延王にもの凄ーく感謝していた。
すでに作戦Sを発動して2ヶ月あまり……正直そろそろ限界に近かった。
衣装も祭典用を除いてかなりの数に目を通したし、アクセサリー類や調度品に至るまで鑑定の目を向けてみた。
ああ、私早まったかもしれない……そう思いながら寝台に突っ伏したこと数知れず。
そろそろ鑑定結果を記した紙が寝台の下から溢れ出しそうになっていた。
それらには女官の目に止まらぬようちゃんと呪をかけてある。
(だったら何故わざわざ寝台の下? という疑問は受け付けない。なぜなら王道を守ってこその王だからだ!!)(←えー!?)
うふふーまるでイケナイ本を隠してるみたーい☆と気分が乗っていたのははじめの3日だけだった……とここに追記しておく、マル。

「どうやら、なんとかやれているようだな」

「どうでしょう。今の私には出来ることなど少ないです」

「早く、頼りに出来る官を見つけることだな」

「……」

本当に、今出来ることは少ない。
頼りになる官を探しながらも、表だってそれを表す訳にはいかない。
それを敏感に察する者がいる(気付れればすぐにその者は廃されるだろう)
孤軍奮闘の暗躍は、表を制している者に気付かれればすぐに瓦解される恐れすらある。
(その分気付かれない自信はあるが)

「……そうですね」

恐らくじきに大波が来る。





王朝に地震と大津波



その後、延王とこの世界の酒について超熱く語り合ってしまったのは秘密だ。
(延麒と楽俊にスッゲー呆れた顔をされたが)
延王に慶の事でこれ以上ご迷惑をおかけするわけにはいかないよな、と陽子が気を使った結果、見事に暴走してしまった様子。

だ、だって云百年前の酒のことなんかすっかり忘れているからちょっと聞いてみたくて……

陽子は意味もなく太郎と火維に言い訳してみた。
(そして彼らは一も二もなく陽子に賛同した)
(それを景麒が呆れたような眼差しで見ていた……嫉妬なんかしてないもん!)






まだバラさないの? あ、そう……まだですか(脳内陽子との会話)痛
予定ではここで軽く暴露入るかと思ったのですが……おそらく陽子は自分からは言わない。
そして延王(と延麒)は初っぱなから長期戦の構えを見せています。
楽俊?彼は最初から面白陽子との面識しかありませんし、なんも疑問に思ってません☆





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