関弓山につき、玄英宮まで案内されながら、陽子はなんだか自分でも寒いのではないかと思われる演技を続けていた。

【設定】
こちらに着たばかりの海客
妖魔に襲われ続けていたので戦闘能力はそこそこ
度胸と肝は据わった性格(蓬莱のことなんて誰も分からないんだから元々だと騙しとおす!)
玉座に着くことについては、いまだ保留
とりあえず景麒を一発殴るために取り返したい

……まぁ、こんなもんか?
呪のかかった階段に驚いてみたり(慣れると呪を受けずに駆け上がることも出来た、いい運動になった)
雲海に驚いてみたり(一度底まで行けないか真剣に素潜りしたらもの凄く怒られた)
花々に感動してみたり(アレは食べられる、コレは薬になる……そんな感想ばかりで申し訳ない)
傍からみれば胡散臭い演技も、云百年の実績のおかげで他の人間には“本当”に見えるだろう(たぶん)
別に本気で“記憶”のことを隠したいとは思わないが、なんとなく面白そうだから隠しているだけだったりする。

陽子は、乳白色と薄い桃色の混ざった香りの良い風呂に入りながら今後の作戦を立てた。
とにかく、女は秘密の数だけ美しくなるのよ、作戦でいこう。
秘密保持で美しさ倍増!女性らしさ激増!!大作戦だー!!
(漢らしいといわれ続けたことをちょっと根に持っている)
ヨッシャー!と気合を入れてお風呂を出た。
(女官さんたちがわらわらやってくるのは諦めた眼差しで受け入れた……コレも慣れだな)





外に出ると、美しく品のある男性と、健康的で知的な青年が立っていた。
男性のほうが頭を下げてきたので、陽子はとりあえず首を傾げて微笑み返した。
(まだ王としてここに居るわけではないし、こんなお茶目は許されるだろう)
それを目にした男性は少し驚いたような顔でこちらを見ていた。
まさかこんな反応をされるとは思っていなかったようである。
(この少女が新たな王……不思議な雰囲気の方だ)

「そちらのカッコイイお兄さんはどちらさまですか?」

本当に分かっていないのか、実は確信犯なのか判断しづらい笑顔を楽俊に向け陽子は話しかけた。
朱衡は柔和な笑顔を浮かべながらどう返答しようか一瞬迷ってしまったが、とりあえず言葉通りの意味にとらえ返答した。

「お連れ様にございます」

「え! 楽俊! 本当はそんなに美青年だったんだな☆スゴク格好良いゾ!!」

陽子は驚いた声をあげ、楽俊を心の底から褒め称えた。
周りにはキラキラして花まで飛んでいる。

「……陽子、白々しいぞ」

しかし楽俊には陽子がからかっている事が分かったらしい。
そう言って顔をそむけながら言った。
陽子はその様子を見て、可笑しくなってしまい素の笑顔を浮かべた。





暖かく光り輝く少女のような笑顔


(ほぉこれは……)

しかしながら陽子の珍しい素の笑顔を見ることができた幸運の持ち主は、その場にいた朱衡のみ。
彼は表面の笑顔を崩さずに、内心面白そうに少女を観察していた。

これが、雁の曲者が景の新しい女王を気に入った瞬間である。



しかしうっかり曲者に気に入られてしまった陽子は、何百年生きようが進歩しなかった鈍感のせいでそのことに全く気づいていなかった。





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