「――!? しまった!」
「! 陽子!?」
突如近くに異様な気配を感じ、陽子は走り出した。
グルゥゥウウァァアアアァァゥゥゥウウ
走り寄る陽子の目の前に、犀渠が現れた。
低く唸り、今すぐにでも陽子に襲い掛かってきそうだ。
陽子は闘気と覇気を全身から膨大に放出させながら、苛烈な瞳で犀渠を睨みつけた。
しっかりと二匹目の気配も感じ、それにも向かって声を投げかける。
「民に、手を出すな」
大声でもないのに陽子の声は辺りに響き渡った。
いきなりの妖魔の出現に驚き悲鳴を上げていた人々は、陽子の雰囲気に呑まれ陽子の方を驚いた眼差しで見ている。
「街中で襲ってくるとは……そのまま堕ちるか」
まるで陽子を取り巻くオーラが妖魔たちを足止めしているかのように、妖魔たちは恐れに身体を動かすことが出来なかった。
それが分かっていた陽子はすっと視線をあらぬ方向に向け、何事かを語った。
人々には意味が分からずとも、向けられた者には分かる言葉を。
ちなみに冗祐は陽子の行動をハラハラしながら見守っていた。
ももももしかして主上はこのように人が多い場所で麒麟ごっこをなさるおつもりでは……!?
日ごろの苦労が窺える悩みである。
陽子はあらぬ方向を睨み付けていた目を、目の前の犀渠たちに向けた。
そして瞳をキラリと輝かせる。
「さて、ここはやはりお馴染みの……」
冗祐は『もう駄目か……!』と天を仰ぎ(身体はないから気持ちだけね)
傍で見ていた楽俊は『まさかアレをやるつもりか……!?』と恐れおののき(でもちょっと楽しみだったり)
周りの民ABC…たちは『今度は何が……?』と不思議に見つめていた。
……が、
キュァァギャァァアアアグォォオオオン
調度いいタイミングで新たな妖魔たちが現れた。
そして金縛りから開放されたかのように、いきなり二匹の犀渠も陽子に突進してきた。
人々は(見た目)少女に襲い掛かる妖魔たちを見てまたしても悲鳴を上げた。
「陽子ー!!」
「…………ったのに」
陽子は下を向いてプルプル震えている。
人々は少女が恐ろしさに震えてるのかもしれない、と思った。
(さっき畏れ多いオーラを出していたのは完全に思考の外だ)
しかしまぁ、陽子がそんな柔なはずなかった。
「せっかく! いいところだったのになんてことしてくれたんだぁぁあああ!!!」
ひらりひらりと妖魔の攻撃を避け、全ての妖魔を一撃で仕留めた。
ちなみに犀渠の一匹は一撃で数M程勢い良くふっ飛んで行った(どんだけ力強いんだ)
想定外と予想外の共演
「これは、予想以上だな」
出番がなくて登場しそこなった色男が露店の影で呟いた。
面白いものを見つけたような、楽しげな眼差しで騒動の中心を見ていた。
【偏見まみれの妖魔説明☆】
犀渠(サイキョ)…青牛型。頭には二本の大きな赤い角がある。大きな体で突進されるとかなりの脅威。
←
■
→