2人と2匹の旅は順調に進んでいた。
突然の陽子のカミングアウトをその広い心で受け入れた楽俊は、むしろ陽子にこっそり尊敬の念すら感じていた。
旅の途中では山賊に襲われたり、強盗に狙われたり、スリにあったりと中々体験できないようなスリル満点の出来事がたくさんあった。
(異質な雰囲気を持つ陽子のオーラはゴキブリホイホイのように事件を引き寄せた)
しかし陽子はそれらの事件を華麗に流麗に面白おかしく(最後の可笑しくね?)解決していくだけに止まらず、
人々に生きる希望すら与えて回っていたのだから傍で見ていた楽俊は感心するばかりだった。
陽子は厳つい顔の男たちに『姐さん!』と慕われつつも彼らと別れ、こうしてここまで旅を続けて来たのだった。
ここは、午寮の門の前である。
「いや〜ここまで長い旅だったね」
「そうだなぁ。陽子はよっぽど災難に好かれているみてぇだな〜!」
「そうかな? 災難に好かれているのは楽俊じゃない? 私を拾ったくらいなんだから」
「そんな! 陽子を拾ったことは災難なんかじゃねぇ! 幸運だ!」
楽俊は本気でそう思っていた。
初め陽子を拾ったのは、苦労をしたらしい海客を哀れに思ったからだった。
(珍しい服を着ていたし、蝕のことを聞いていたのですぐ分かった)
しかし目覚めた彼女と目をあわすと、途端にその強大な雰囲気に呑み込まれそうになった。
話し出すと砕けた雰囲気になったが、それでも内に秘めたものの気配がうっすらとにじみ出ており、瞳に慈愛と知性の輝きが宿っているのが分かった。
この人物はおそらく、大きな運命を背負った人間に違いない。
そう思った楽俊を肯定するように、道すがら様々な事件が起きた。
おそらくそれらは陽子の放つ隠し切れない異質な空気に、後ろ暗い人々が引き寄せられているからだ。
それらの事件を陽子は人を死なせることもなく、むしろ襲って来た者たちの荒んだ心を癒しながら解決に導いていった。
自分の人生最大の幸運は、こうして陽子に出会えたことに違いない、と楽俊は心の底からそう実感していた。
そんな予感がしたからこそ、陽子に延に行くことを勧め、自分も共に旅をすることにしたのだと思っている。
陽子を友と呼ぶこと、陽子に友と呼ばれることがこんなにも嬉しかった。
キュゥゥウウオオオオンギャァァアアアアアァァアァ
突然、人々の溢れた午寮の門の前に怪音が響き渡った。
「――!! 楽俊は門の中に非難して!!」
「! あ、ああ! 分かった!」
これまで数々の騒動を乗り越え信頼し合っていた二人にはこんな言葉だけで通じた。
陽子はそのまま人々の波を逆走して妖魔のほうへ走った。
人々の悲鳴と叫び声が辺りにこだましている。
「友よ、力を貸してくれ!! 第一隊は人々に襲い掛かる蠱雕を食い止めろ! 倒す必要はない!!」
『『『御意』』』
陽子の影から饑饑が数頭飛び出して、そのままの勢いで人を攫おうとしていた蠱雕に飛び掛った。
人々はそれを好機と見てまた逃げ出した。
「第二隊は第一隊の援護を! 人々が逃げ出すまで油断するな!!」
了承の言葉が響き渡ると同時に、また数頭の饑饑が影から飛び出した。
陽子は走って目の前に飛び掛ってきた蠱雕の嘴を軽やかに避け、そのまま羽を切りつけた。
そして飛び上がって蠱雕の脳天に剣を突き刺す。
辺りに断末魔の叫びが響き渡った。
「第三隊は兵士たちが門を閉じるのを食い止めろ! その後は隠れて門を守れ! 傷を負うな負わせるな!」
そしてまた数頭の影が飛び出し、門のほうへ向かっていった。
指示を出し終えた陽子は、上空を飛び回る蠱雕へ目を向けた。
「人々を傷つけさせはしない……!!」
繰り返す戦いは様相を変えて
「……(じーっと蠱雕を見つめる)」
『……主上、折伏ごっこはもうお止め下さい』
ギクッ!!
せっかく全力で人々の安全を確保したのに……
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