やぁ楽俊、久しぶりだな! 元気にしているか?
私は相変わらず、毎朝ご飯をおかわりするほど健康的な毎日を送っている。
楽俊も朝食はしっかりとらないと駄目だぞ。
朝食は一日の源だ。昼食や夕食を抜いてしまうことよりよっぽど害があるから控えるようにな。
栄養配分を考えろとまでは言わないから、せめて食事をとることを忘れないようにしてくれ。
楽俊は本に集中すると自分のことを蔑ろにしそうだからな。
……ああ、話が逸れてしまったか。
いやぁ、久しぶりに楽俊に話しかけられると思うと胸が躍るよ。
今も頭の中では楽俊に話したいことが……そうだな、50はある。
でもこの子に無理をさせるわけにもいかないからな。
残念だが厳選して語りかけることにしよう。

最近、ようやく金波宮にも慣れてきたよ。
やはり宮城というのは適度な緊張感に満たされていて、神経が研ぎ澄まされるような気がするな。
しかし今は狐狸妖怪の住処になっているからな……どうにか殲滅していかねば……まったく、民に敬われる神仙の身でありながらまるでゴのつくアレのようにしぶといのだから……確かにゴー一族を一掃した時の爽快感と言ったらなかったが……しかしわざわざそれをもう一度味わいたいなどと願った覚えは……ああ、やっぱりこの地にもいるのだろうかゴー一族は……考えるだけで鬱だ……それに比べれば宮の税金泥棒たちは大したこと無いのだろうか……

ん? ……今は何の話をしていたかな……ああ、巧に行った時の話だったな!

楽俊の母さんは元気にしておられたよ。
久々に訪ねた友人のように暖かく持て成してくれてね、楽俊のお母さんはやはり聡明な方だと改めて実感したよ。
そうそう、敬意と感謝を込めて精一杯のお土産を持っていったら、随分驚かれた。
この世に楽俊という至宝を生み出してくれたのだ、まだまだ感謝はしてもし足りないよ。
せっかくだから雁での楽俊の様子を一挙一動一言まで事細かに話させてもらった。
……いや、私が誰かに自慢したかったのかもしれないな……『楽俊はこんなに素晴らしいんだ!』って。
育てたお母さんに言うのはおかしい気もするが、お母さんも喜んでくれたのだから問題無しだな!!
お母さんは楽俊のことをとても心配しておられたよ。
本当に優しい方だね。

やはりお母さんにはファンクラブの会長になって頂かなければならないな……ああ、ファンクラブではなくて愛護組だったか? ……はじめは小さな愛護集だったのに、少しずつ仲間を集めてとうとう愛護組織にまで成長したのだったな……懐かしい。その頃にはついに諦めて黙認してくれるようになったくらいだし、これからも精一杯頑張らないとな! とりあえず第一回の首脳会談は上手くいったから、次の手を考えねば……

それと、巧に太郎と火維以外の友たちを還したんだ。
人を襲うことのないないようにしっかり言い含めておいたから、安心してくれ。
何かあった際には、太郎がすぐ分かるらしいから大丈夫だろう。
私も丹念に彼らの本能を抹消させ……あ、いや、なんでもない。

ああ、そうだ。
延び延びになっていた即位の儀式が来月に決まったんだ。
必要と分かっていても儀式と名の付くものは肩が凝るから好きでは無いのだがな……やはり慶では儀式よりも祭りを重視していこうと改めて……
楽俊も来てくれると嬉しい。
楽俊が来てくれるのならば、あの重い武装にも耐えられる気がする。
それ以上に着飾ったって文句は言わない。
いや待てよ……過剰装飾を盾に景麒にもイロイロ……ふふふ……

楽俊も面白可笑しく生活をしていることを願っているよ。
次はもっと楽俊の腹筋に響く話があればいいのだけど。
それじゃ、またな!





危険混じりの近況報告



「……陽子、心の声が口から出てるぞ……」

よくよく考えてみれば声に張りがない気がするし、陽子も慣れない生活で疲れているのかもしれない。

そう思いながら楽俊は聞いてはいけない言葉たちのことを脳内から抹消しようと努めた。
惜しむらくは、この高貴な文通には読み返し機能が付いていないので陽子自身が何を吹き込んだか確認できないことだった。

久しく感じる淀んだ金波宮の空気に、実は陽子は思いっきり気分を害していた。
話している最中に『思考』と『言動』が勝手にバトンタッチするくらいには。
今や癒しは楽俊とのやり取りのみ……慶の未来は楽俊のふっくらとした柔らかい肩にかかっている!!
……たぶん。





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