「せんっせぇー!! 私、天界から迎えが来たので帰ります! かぐやは天へ帰りますって父と母に伝えてコレ渡しておいて下さい!!」

ブチィッ

ズダダダダダ


とりあえずこの場に居続けるのはマズイ気がする。
長く積み重なった記憶のせいでで蓬莱での生活の思い出はあやふやだが、いきなり非現実を突きつけられたこの日のことはよく覚えている。
確か有り得ないことに初めての異文化交流は怪物(妖魔)との戦闘だ!!
(その前のいきなり無理矢理問答無用な誓約のことなんて欠片も覚えちゃいない……いないったらいない)
今にも妖魔が襲ってくるかもしれないのに、自分のせいで怪我人を生むわけにはいかない。

っていうか学校の修理費が嵩むのは良くない!!(公費を無駄に浪費されるのって困るんだよ!?)

陽子はまず、なにやら怒りに染まった顔を向けてくる中年の男(この人、先生であってるよね?)に思いついたコトを大声で訴えた。
こういう時は勢いが大切だ。
どんなに後から思い返してみて赤面するほど恥ずかしいことを言っていようが、今は停滞しそうな状況を押し流せればそれでいいのだ。
事実、見事に濁流に呑み込まれた目の前の男は、ポカンとして陽子に言いくるめられた。
(あ、ああ。と流されるように返事をしていたような気がする)
陽子は言葉と共にシンプルながら美しい飾りを男に渡していた。
それはいまだに痛みで腹を押さえる金髪の服から華麗にちぎり取ったものだ。
あり合わせの物だが、惜別の品として国のナンバー2の付属品は悪くないだろう(たぶん)
そのまま自然な流れで仏頂面の腕を引きずり(手を引くとか可愛いもんじゃない)屋上に向かって走り出した。
(道が分からなくて少しだけ迷ったのは内緒だ。とにかく階段を上がればいいと開き直って)

ダダダダダ

走っている最中、痛みから復活したらしい長身はなにやら不審そうな顔を向けてくる。
そんなこと知ってても完璧無視の陽子は、先ほどの発言を振り返っていた。

かぐや姫か……昔考えたことが咄嗟に理由として出てくるとはね〜

いつだったか、自分の境遇がまるでかぐや姫のようだと思ったことがあった。
蓬莱で生まれこちらから迎えが来て帰ってしまった自分と、地球で生まれ月から迎えが来て帰ってしまったかぐや姫。
(あまり深く考えると、かぐや姫と自分の状況の違いに理不尽さを覚えるのでシンプルに考えた)

いやー結構いい理由だったんじゃないか?……ハッ!でもかぐや姫ってたしか拾われっ子だったような……父さんと母さんの子どもじゃなかったのか、って周りに思われるのはよくないな……でももう言った後だし、まぁいっか☆

使令に襲われそうだというのに、陽子はけっこー余裕だった(妖魔なんて可愛いもんだ!と本気で思ってる)
とりあえず別の思考領域でこれからの展開を思い出したり、迫り来る妖魔をどう倒すかも考えているあたり、さすがは百戦錬磨の陽子である。
ただ、不幸にも複数の思考を同時処理することに慣れてしまったため、うっかり余裕が出来て愉快な事も考えられるようになっただけだった。
そうして陽子が悶々と色々色々考えている内に屋上に来てしまった。





「あれ? 陽子?」

屋上の扉の上の方から聞こえてくる声に、陽子は振り返る。
内心「ちっ!人が居たのか!!」とか思いつつも顔は冷静なまま。
しかも私を知っているということは、蓬莱での知り合いなのだろうか?
ちょっぴりワクワクする気持ちを抑えられないが……

「……? (誰?)」

「あれ、そいつ誰? 陽子の彼氏〜?」

「違う!!」

とりあえず凄く苛立つことを言われたので、陽子は王の覇気を上乗せして訴えた。
この身体はまだまだひよっ子だった時と同じのようだが、精神に付随する雰囲気やオーラなんかは云百年研磨された強大なものだ。

「!! そ、そうなのか」

「!!」

その様子に声をかけた青年はもちろん、傍で聞いていた無表情も驚いて目を見開いた。

(これが先ほど怯えていた少女なのか……?)

景麒は目の前の少女の変化が信じられなかった。
はじめ声をかけた時は、怯えて自分を窺うように見ていた少女。
しかし今目の前にいる少女は、歴戦の将のような闘気と偉大な王のような覇気を纏っている。
なぜ、いきなり……
しかし状況は彼に熟考を許さなかった。


クワァァアアァァアキュゥゥアアアア


いきなり辺りに響いた怪音に、陽子の瞳を煌めかせた。

「――! 剣を!!」

さっと当たり前のように景麒の前に陽子の手が出された。
景麒はその行動に驚きつつもその声に従い、即座に女怪を呼び出し、剣を手渡した。
飛びかかってきた妖魔やいきなり現れた女怪にギャーギャーと騒ぐ背後の人間たちの声を聞きながら、認識できずに。
主の言葉は、抗うことの出来ない絶対君主の声としていまだに景麒の中で響いていた。

剣を手にした陽子は、緋色の残像を残し屋上を駆け抜けた。
足取りは力強く、剣を握る手には決意を乗せて。

景麒は緋炎の踊る少女の背中に、慶国の明るい未来を見たような気がした。





新たな過去での最初の一撃


屋上破壊されたら直すのにどれだけかかると思ってるんだコノヤロー!!

思考が政策税金資金繰りに完全に支配されてしまった国主の内心なんてこんなもんだ。

君主として間違った思考ではないことが唯一の救いである。





完全にアニメ沿いにすること決定。
でも最強陽子が激変させるつもりだから、あんまり意味ないかも(笑)
屋上のさらに上にいた男女について、この小話では完全スルーされてる☆

【偏見まみれの妖魔説明☆】
蠱雕(コチョウ)…5Mはありそうな獰猛な巨鳥。鋭い嘴とかぎ爪が武器?





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