ああ、なかなか波瀾万丈の人生だった。
生まれは一般家庭、いやちょっと亭主関白の権化のような父がいたおかげで少し窮屈な子ども時代を過ごしたが、それは私の意志が弱かったせいでもあり父だけのせいとは言い切れないだろう。
母はたおやかで優しい人で、私に女性として色々と教えてくれた……が、なんだか申し訳ないな、私は女性らしいと言われるより漢らしいと言われる方が多かったような気がする(しかも“男”じゃなくて“漢”だぞ、なんでだ!?)
いきなり思春期の多感な時期にこちらに連れ去られ(このことに関してはアイツのいつもの仏頂面が申し訳なさそうになったものだ。ウザイ時は蹴り飛ばして元気づけてやったが)いきなり飢える凍える襲われるの最上級の三大大歓迎を受けたものだ……今思い出してもよく生きていたと思う。私、凄い☆
しかしこんな絶望に染まりきった時にこの世の聖人のような彼(本人は自分の欲もあったと言うが無視だ無視。私にとってはどこぞの神獣よりも有り難い存在だった)に出会い、やっとこれからはマシな生活を送れると思ったら……私が王だと?ふざけるなぁぁあああ!!……あら、いやだ、私ったら。ふふふvv
とにかく無理矢理(私の意志だったって?そんなもん周りの状況が許さなかっただろうがよ!そりゃ決めたのは私だけど)平穏平安平凡な生活を捨てさせられ、狐狸妖怪悪鬼魔物の巣窟のような朝廷に連れてこられた。
それからはもう寝るも食べるも遊ぶ(!?)も大変な人間の欲望の渦巻く朝廷、みな仙人のくせに霞を食まずに民から税を搾り取るような『お前仙人のくせに何さらしとんじゃー!』ばかりの溢れる世界で生きて行かなくてはならなくなった(しかも味方は無情無口無表情の麒麟のみ……人間ですらない!)
そこで知らない文字を習い(漢字っぽくて安心してたけど、逆に変な知識があったせいで混乱を極めた)、慣れない習慣を学び(人が木に成るってどゆこと!?)、初めての礼儀作法を叩き込まれ(王様って一番偉いんじゃないの!)……とにかく生活だけでも大変なのに、来て1年もたたない世界の政治を動かせってそれはルールを知らずにマウンド立たされるより酷いよね。ホントあの時は地獄だった。
しかして私は朝廷を出奔し(逃げたのではない、これは嵐の前の静けさだフフフフフ)多くを知り学び感じ選び乗り越え……ある騒動に関わることで多くの罪人を裁き、多くの仲間を得ることが出来た。この時得た仲間たちは長い時を共にした仲間であり大切な家族だった。
それからも本当に色々なことがあったものだ。様々な問題が起き現れ襲いかかり、色々な解決策を考え生み出し導き出し、こうして着々とこの国を私色(といっても国のため民のためになることだと自負している)に変えていった。
自身の命が本当に危ないと思ったこともあるし、自身の半身を失うかも知れないという恐怖を感じたことも、仲間を失い悲しみに溺れたことも、民を多く失い絶望したことも、近隣諸国が倒れ寂寥に身を沈めたこともある。
しかし私はそれらを乗り越え飛び越し這い上がり生き続け、こうして長く国と民を……世界を支えていくことが出来た。
気がついたらこんなにも長い時が過ぎていた。
ああ、なかなか波瀾万丈の人生だった……だが、とても楽しかった。
隣に美しい姿で眠るように横たわる半身を見やる。
これまでたくさんのことがあった。
たくさんの時を共にした、愛しい民よ、国よ、世界よ、我が半身よ。
私はもう眠ろう。
私ももう眠ろう。
長かった永かったこの人生、こうして終えることが出来るとは、なんと幸せなことだろうか。
眠るように世界に別れを告げた私について
素晴らしい政策を多く残し、全ての国と民を愛し、多くの者に慕われた王。
世界の母と讃えられるほどの偉大な女王は禅譲という形で世界に別れを告げた。
半身と寄り添うように眠る姿は、まるで母に抱かれる幼子のように安らかだった。
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