ざざ〜ん  ざざ〜ん

うっすらと浮かび上がる意識は、抗いがたい暗闇に囚われて明確な感覚を感じられない。
腕は動かず、目を開けることも出来ず、必死に研ぎ澄ます聴覚に届くのは、ただただ長閑な波音だけ。

ざざ〜ん  ざざ ざ〜ん

久しぶりに耳にする懐かしい音にうっとりと浸って酔いしれたい気もする。
このまままた意識を深く眠りにつかせれば、もしかしたら遠い日の思い出を夢に見ることが出来るかもしれない。
しかし、意識を失う前に見たのは、大切な子の驚愕に満ちた顔。
傍に居るであろうもう一つの気配を、眠気に逆らって必死に探る。
(視界が閉じる寸前に抱き寄せ、意識を飛ばす最後の一瞬まで力を込めていた)


あたたかい


見つけた気配は、傍近く、腕の中にあった。
思うとおりに動かせない四肢に強く力を入れて、ようやっと僅かに腕を動かすことが出来た。
冷たく張り付く衣服越しに、微かに感じる人肌とか細い吐息。
それを認識して、やっと安心することが出来た。


よかった、ちゃんと、傍に居る


たった一つ不安が解消されただけで、身体はその欲求を最大限に行使してきた。
荒れ狂う津波のように襲ってくるのは、これ以上は耐え難い酷い眠気だ。
一つとはいえ何物にも代え難いその不安が安堵に変わったことで、とうとう暗闇の底から伸びる手を振り払うことが出来なくなってしまった。
そして、思考は閉じた。


「――!! ――、――――!?」


沈み込むように落ちていった意識の端に何かが引っかかったような気がしたが、暗闇を切り裂くことは不可能で。
すでに暖かな闇を漂っていた。





「本当に君たちといると騒動ばかり起こしてくれるよね。コレは一体どういうことなのさ」

「あのね、いくら俺でも分からないことは分からないよ。だからこそこうやって2人が目を覚ますのを待ってるんだろ」

「じゃあさっきのアレは何だったんだ。わざわざあんなことまで言って」

「それは機転の利かないルックとは違って応用きかせただけよ」

闇の中を軽快な調子で言葉が跳ね回る。
その声と言葉のかけ方に安心を覚えつつ、暗闇から己が這い上がってくるのを感じた。
うっすらと浮かび上がる意識は、今度こそしっかりと光を映し出した。
飛び込んできた光に眩しそうに目を瞬かせながら、ゆっくりと彼は身体を起こした。

「あ、目が覚めたんだね。気分はどう?」

「……うん、ちょっと身体が怠いかな……」

ティルの言葉にラズロは弱々しい声で答えた。
これだけでラズロがかなり弱っていることが伺える。

「かなり強く身体を打ち付けていたみたいだよ。紋章で治癒したんだけど、どうも治りが悪くて」

「そっか……ミオは?」

「そっち」

ティルの指の先には、ベッドに横たわるミオの姿があった。

「こっちはおでこに小さな腫れがある程度だよ」

心配そうなラズロの様子を見て、ルックがすらすらとミオの様子を語った。
その言葉に安堵するも、その声の調子が何か引っかかったラズロは声の主に目を向けた。
そして、そのまま固まった。

「……」

「……な、なんだよ。言いたいことがあるならハッキリ言えばいいだろ」

見つめられているルックは、狼狽えた様子で声を荒げる。
しかし見つめるラズロの表情はぴくりとも動かない。
再びルックが何か言い出そうとする前に、ラズロは感嘆の吐息を言葉と共にこぼした。

「……随分とまぁ可愛らしい姿に……」

「言うに事欠いて、君もそれか!!!」

怒声と共に立ち上がったルックはしかし、確かに可愛かった。
サラサラと小さな風にも揺れる薄茶の髪は腰まで伸び、ルックの挙動に合わせてゆらゆらと楽しげに揺れている。
そして踊る薄茶のマントは、華奢な身体をいっそう儚げに見せていた。
顔のパーツひとつひとつは精巧な人形のように配置され、見る者に可愛らしい印象しか与えない。
ふっくらとした頬はほんのりと桃色に色付き、少ない露出部分は色つやの美しいたまご肌だ。
何よりも意志の強さを思わせる光に満ちた瞳は、奥深い焦げ茶色で、キラキラと光を反射して宝石のように輝いている。
(もう色々言葉を尽くしても私には力不足だが、とりあえず……)

「凄く可愛いね」

「っ、改めて言うなー!!」

ルックは吠えた。
(しかし可愛い子が髪を振り乱して吠えたところで、ただ可愛いだけである)

「……う、ん……?」

「あ」

「あーあ、ルックが大声出すから」

小さなうめき声を出しつつ、最後の一人はベッドの中でもぞもぞしている。
瞼がふるふると揺れ、いまにも目を開けそうだ。
やれやれといった仕草で首を振るティルに、ルックも若干ばつが悪そうな表情をした。

「それは……まぁ悪かったよ」


「……ん……」


「……」

「……?」

「…………(フルフルフルフル)」


ガバァ!!


「っ寝るな!! いい加減起きろ!!」


もぞもぞしたまま再び布団にくるまってたミオの毛布を、ルックは勢いよく引きはがした。
(テメー、さっきの貴重な謝罪の言葉返せェェエエ!!という背後の文字がおどろおどろしい)
ティルとラズロは傍で苦笑いをしているのであった。






話し合いは始まりもせず……とにかく4人揃いました。
この4人を絡ませると多大な労力を使うということが分かった…。
早く話の内容に行きたいです…。
(ゲームのキャラが町長しか出てきてないし!! 今気づいたー!!)

ちなみに彼らの外見や服装の設定はすでに妄想済みなので、序章が終わり次第打ち込みます!





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