「次は白虎だ! 真面目でお堅いように見せかけ熱い情熱を秘める天の白虎は、このお方! 延の高官、朱衡殿だー!!」
「よっ! 待ってたぞ朱衡! なかなか似合っているじゃないか!」
「……また他国の方を……ていうか朱衡殿!? しゅ、朱衡殿……あなたそれでいいんですか!?」
「何を仰います青将軍。景王君にお認めいただくとは、拙にとって望外の喜びでございます。誰よりも相応しい天の白虎となってみせましょう」
「そ、そうですか……(な、なんて清々しい笑みなんだ……! 言えない、言えないぞ……この配役ならば浩瀚様と変わってもらうのもアリかもしれないイケルいける!と、思ったのに……! 『代わって下さいプリーズ☆』……なんて言えない……!! この笑みは浩瀚様と同属性……ますます浩瀚様との変更もアリなような気がして心が重苦しくなるが、絶対に言えない……!! この方はすでにマジだ!!)」
「同じ八葉として互いに精進して参りましょうね、青将軍」
「は、はい……(うっ……コレは言わぬ前の口封じか……いたらぬ私をお許し下さい浩瀚様……)」
「李斎殿、鈴殿もどうぞよろしくお願い申し上げます」
「はい! 朱衡様なら大歓迎ですわ。よろしくお願いします」
「共に全力を尽くしましょう。こちらこそ宜しくお願い申す」
「主上、何故朱衡殿を天の白虎になさったのですか?」
「ん? 私の心はお見通しじゃなかったのか?」
「そうですね。しかし稀に主上自らのお声でお聞きしたいと思うこともあるのですよ。主上の美しい声音をもってして私の願いに答えてはくれませんか?」
「……(認められないんだな、浩瀚様……でもまぁ僕にも少し不思議に感じられるしこのまま聞いていよう)」
「確かにな〜。うちの朱衡を抜擢するくらいなら、お前のとこの二番目でも良かったんじゃないか?」
「(うぉを!! 言った言っちゃったぞ延王君が! ……うわぁぁああぁああ朱衡殿のあの憎悪の眼差し……これは絶対自分の主に向ける目じゃない! アレは一族郎党を己以外虐殺された心美しき少年が純粋ゆえに復讐の心に取り憑かれた時に浮かべる全力投球の悪の眼差しだ!! 凄い、凄すぎる……!!)」
「……延王君、お茶は如何ですか?」
「お、悪いな。有り難く頂こう」
「(そして浩瀚様の浮かべる表情はこれまで延王君に向けたことのない仮面の笑顔だ! ここで己をさらけ出して感謝の気持ちそのままに笑みを浮かべないのはさすが浩瀚様だが、いつものように鎌を構えていないだけ余程譲歩しているぞ!?)」
「スゲー百面相だな。桓?は何考えてんだ?」
「さぁ? 今日の夕食でも気にかかってるんじゃない? (桓?殿はついに心の中でツッコミを入れだしたな)」
「あ、私たちの分のお茶は、ハイ」
「ありがとう存じます、鈴殿」
「おーあんがとな」
「ありがとう」
「そうだな……確かに浩瀚でもこの役を果たすことが出来ただろう……」
「(おお!? 主上も好感触な反応を……!!)」
「しかしまぁせっかくだから延の方をご招待したくてな!! 馴染みのある朱衡殿にお願いしたというわけだ☆」
「しゅっじょーう!! そんな理由なのですか!? だったら何故『慶東国歌劇団』なのですか本末転倒です!!」
「ははっ! 桓?、少し静かだと思えばすぐコレか? 全くお前は可愛いヤツだな〜!!」
「……!! (答えになってないです主上!! ていうかそんなこと言うからホラー!! 今度は二倍になったじゃないですか心にグサグサ突き刺さる敵意の視線がぁぁあああ!!)」
「なるほどなぁ……だったら俺でも良かったんじゃないのか? そもそも王の俺を差し置いて名を連ねるなど、全く良くできた臣下だなぁお前は」
「フフ、主上にお褒めいただくことではございませんよ? この座をお射止めになりたいなら、まずはここ数百年で貯めに貯めた執務の山を一掃してご覧なさい。天の白虎とやらは責任感の強い真面目な人柄のようですから」
「…………アレを全部か?」
「足りないのであれば台補の分も宜しくお願いいたします。半身なのですから、責を負うのは当然でございましょう。それでこそTAKAMICHIの名に相応しいと言うもの」
「…………チッ、他のヤツを狙うか」
「ちょちょちょちょっと待って下さい延王君!? 貴方もしかして誰かの座を奪おうとここまでいらっしゃったのですか!?」
「何を言う。こうしてうちの子の晴れ姿を見に来ただけにすぎんさ。青将軍の想像力は豊かすぎるのではないか? ハッハッハッハ★」
「(め、目が笑ってねぇぇえええ!! この人は本気だぁぁああ!!)」
「全く桓?の思いこみには苦労する。お前はいつからそんな虚妄に惑わされるようになったのだ。まさか主上の御前でその者を言い負かし、役を奪い取ろうなど考えるはずもなかろう」
「(そして浩瀚様も本気だー!! そ、そうかこの人たちこのためにこの場にいるんだ!! そ、そうか……はじめに紹介されたのは女性陣と俺だけ……女性への攻撃はこの二人がするはずもない……そもそも女性にケチをつけようものなら主上が全力で援護するだろうし、主上が悪感情を抱く行為をするはずがない……俺の時は俺自ら交代の願いを出すだろうと傍観していたのか……!! なんて方々なんだ!!)」
「桓?はまた無言モードか。静かになって良いことだが、ツッコミがないのは何やら寂しいものだなぁ」
「もう陽子ったら。そんなこと言わないでよ。私たちだっているじゃない?」
「そうでございますよ、景王君。拙らがお側に付き従うだけではご不満ですか?」
「景王、お気を落とされなさいますな!! ……こなったら、この李斎が景王のお心に沿うためにもツッコミを極めましょう!!」
「いえ! 李斎殿はそのままで素晴らしい御方です。ご心配お掛けしてすみません……みんな、ありがとう!!」
「……絶対にあの中に入ってやるぞ。俺は諦めん!」
「……私の本気、お見せしましょう……」
「(うわぁぁああ、この人たちマジだ! マジもんの本気だっ!!)」
「じゃ、次行くなー。妖艶たる魅力は女性方を虜にする……魅惑の男性、地の白虎は奏国の浮浪太子こと利広殿だー!!」
「やぁみんな、よろしくね」
「(ああもう他国とかどうでもいいな……そもそも慶東国歌劇団という名に拘っているのは俺だけだし……ていうかもうこれ慶東国だけじゃないよな? 改名すべきだよな??)」
「……」
「……桓?、ツッコミはどうした。主上にこのような悲痛なお顔をさせるとは貴様……その命惜しくないようだな……」
「ぇぇええぇぇええええ!? ちょ、キャラ崩壊してますよ浩瀚様!? 俺の今の態度は何処がいけませんでした!? ちゃんと謙虚になっているじゃありませんか!! って……(うわぁぁああ浩瀚様のあの満足そうな顔、そしてそれを主上が暖かく見守って……俺は噛ませ犬かそうなのかァァアアア!?)」
「どうやら彼らは忙しいみたいだね。挨拶がすっかりかわされてしまったよ」
「おぅ利広、久し振りだな。早々で悪いがその役寄こせ」
「はは……風漢、新手の戯れ言にしては悪趣味だねぇ……お断りだよ」
「戯れ言とは何のことだ? 俺の言葉はいつも本気なのだがなぁ。数百年越しの親友に向けるにはあまりに薄情な言葉とは思わんか?」
「残念だが今日は君の戯言に付き合ってあげるつもりは無いんだ。忘れているようだけど、僕と君との間には人の一生分の経験の差があるんだよ……? まさか、僕に勝てると思っているのかな?」
「では俺はこう返そうか。俺とお前の間にも、人が一生かけても乗り越えられない壁が存在するんだ。一度生まれ直して己の麒麟を捕まえてくるんだな」
「ふふ、良い度胸だね……。そんな君も嫌いじゃないよ?」
「はは、お前に好かれても全く嬉しくないなぁ。生まれ直す時は是非女性になれ」
「生まれ直すのは君のほうじゃないかい? 一度、その腐った性根を天帝に清めてもらうんだね」
「すでに一度天啓をいただいた身だからなぁ。天帝は俺をお認め下さったからこそこうしてこの場にいるのだが?」
「思ってもいないことを口にするとは、なんて軽薄な人間なんだろうね? 君がその場に立つのは所詮己の願望ゆえだろう。認めて下さったなどと恭しい気持ちを抱いてもいないくせに、よくもまぁ口が回るものだ」
「それをお前が言うのか? 口達者さで世界中を旅しているのは何処の誰だったのか。家族の追求を逃れ、国々の女たちを堕として話を聞き、金はあるのに商人が泣き出すまでまけさせる……はは、目の前の人間のことだと思ったのだが記憶違いか?」
「利広殿と延王はとても仲良しだな! 私たちが入る隙もない☆」
「アレを仲良しと言ってしまう主上を尊敬しますよ俺は……。主上、なぜ利広殿なのですか?」
「あののらりくらり加減はまさしく地の白虎に違いない。物事に対して本気になったことが無さそうな雰囲気もまさしくソレだ。きっと彼はいつか言い出すハズ……『僕を本気にさせるなんて君は罪な女性だね』と……どうだ!? なんだかとってもTOMOMASAっぽいだろう!」
「……アレ、ちょっと待って下さいよ……その言葉どこかで聞いたことがあるような……って主上!? それを言われていたのって……!! ちょ、浩瀚様いいんですかコレやばくないですか!?」
「桓?、何をいきなり慌てているんだ」
「この前、利広殿が金波宮に訪れられた際に『ふふ……僕を本気にさせたのは慶に咲く深紅の薔薇か……面白いね』と呟いてらっしゃいました!!」
「!!! ……そうか、ついに自覚されたのか……こうしてはおれんな」
「あ、浩瀚さ、ま……行ってしまわれた」
「……アレは浩瀚のデスサイズの第二形態……その大きさも切れ味も先ほどのモノとは比べものにならない……彼は本気だ。ついに金波宮で人死が出るのか……」
「うをぉう! た、台輔……まだいらっしゃったんで……あ、いえその、先ほどまで無言でしたけど、いきなりどうしました?」
「……なぜ誰も私には交代要請を出してくれぬのだ?」
「え、あーそっか……そうですね……やはり敵は嫌なんじゃないですか? だって悪役ですよヤラレ役ですよ嫌われ役ですよ、て、あ……」
「……(ズーン)」
「(や、やべぇ……台輔がめちゃくちゃ落ち込んでいる……でもさっきの言葉はもの凄く本音だ……否定できない……)」
「ちょっと青将軍!? その言い様はあまりにも軽率ですよ! アクラム様は敵の総大将で確かに悪役・ヤラレ役・嫌われ役・ぶっちゃけムカツク奴とも言える存在です!」
「(おおう……鈴も言うな……台輔の闇が数ランクアップした〜!!)」
「しかし人気で言えばアクラム様だって八葉に負けらず劣らず……むしろ漫画版では主人公が真っ先に惚れる相手です! その役の美味しさは正直言って台輔ごときには務まりようもないほどメロメロ(古)のデロデロ(謎)に良いものですっ!! 軽々しくアクラム様を罵倒しないで下さい!」
「そうですよ青将軍。肩書きに囚われ本質を見誤るなど貴方らしくもない。あくらむ様は敵でありながらもヲトメの心を尽くかっさらっていく魅惑の総大将なのです。そのように軽々しく批評して良い御仁ではございません」
「わ、悪かった……そうだよな、よく知りもしないで知ったかブリして悪かったよ……だからその手のモノを下ろしてくれ!! なんで俺はこんな(クソどうでもいい)コトで命の危機に曝されてるんだ!?」
「分かっていただけたならいいんです」
「ご理解いただけたか」
「鈴殿、李斎殿、今の話は真だろうか……?」
「ええ。紛うことなく真実でございますよ、台輔。だから気を落とされないで下さい」
「景台補。その役は決して卑小な役ではございません。むしろ誇りに思われませ」
「青将軍は些か不勉強のようでございますね。敵の総大将とはいえ、彼の人気は絶大なるものですよ。熱狂的なふぁんも多いくらいですから」
「……そうみたいですね。久し振りに戦場で敵に囲まれた時の気分を味わいました……なぜだ……というよりやはり朱衡殿も内容をご存じなのですか?」
「手慰みに目を通した程度でございますよ。何か知りたいことがございましたらお聞き下さい。同じ八葉のよしみですからね、何でもお答えして差し上げましょう。拙程度の知識でよければ彼らの好きな香や紙、花から、イベントの会話の一字一句まで事細かにご説明申し上げましょう」
「あ、ありがとうございます……(久し振りに人の優しさに触れたような……イヤ待て!? 同じ八葉のよしみ……つまり絶対この役を誰にも渡さないという牽制なのか!? なぜ俺に! あーやっぱり『こうかん様と代わってくれないかな〜』という気持ちに気付かれて……これだから同属性は恐ろしいんだよな。……ていうか好きな香・紙・花!? さらに一字一句までって……最早それは『拙程度』と謙遜して良いレベルじゃないんじゃ……!?)」
「どうされました? さっそく何か疑問でも?」
「い、いえ! そのお気持ちに感激しておりましたウソではありません!!」
「そうですか(ニコリ)」
「……、……。す、少し停戦しようか、風漢。さすがにコレは……(まさか彼がここまでの使い手だったとは……)」
「……ぐ、……あ、ああ、そうだな。とりあえずこの場は一時退却を……(ていうか俺は明らかにとばっちりだよな!? 日に二度も襲撃はこれまでに無かったのだが)」
「あれ? 浩瀚はどこに行ったんだ?」
「はい、主上。ここにおります」
「ん? 今日は香を炊き込めているのか? 珍しいな」
「はい。本日は主上の想いをお伝えになる、大切な日でございましょう? 少々張り切ってしまいました」
「そうかそうか。そこまで楽しみにしてくれたんだな!! (アレ? さっきまで香の香りはしなかったような……ま、いっか!)」
「なぁ陽子。どうして利広なんだ? 地の白虎ならば俺でも良かったのではないか?」
「はは、風漢。今さらそんなこと言うなんて往生際が悪いね?」
「(……チッ、もう復活しやがったか)」
「(うわぁ……浩瀚様の笑顔がどんどん凶悪になっていく……ていうかお二人とも、さっきまでの傷や血糊はどこに消したんだ……大国の王族とはつくづく分からないもんだな……)」
「そうですね……確かに延王でもTOMOMASAの良さは表現できたでしょう……」
「(おお! またしても主上は好反応!? 利広殿の苦々しい表情と延王君の溌剌とした笑顔が対照的だな)」
「でも、延王だと少しイキすぎのような気がしまして。確かに地の白虎はお色気キャラ男性verと言える役柄ですが、延王の場合は常に暗転に突入しそうで……利広殿くらいが丁度良いと判断しました!! ちなみに情報源は各国の戯楼です☆」
「ははは☆ そう言われると何も言えないね、風漢★」
「……」
「ああ、延王君は歩く20禁と言われているそうですね。確かにそれほどの御方ならば、地の白虎は些か物足りないのかもしれません」
「(うわぉ……先ほどとは全く逆に利広殿が輝かんばかりの笑みを浮かべ、苦み走った表情で米神をピクピクさせながら笑顔を貼り付けている延王を見つめている……そして浩瀚様もなんて清々しい微笑を浮かべているんだ……コレはまさしく敵をけ落とした時に現れる狂喜の笑み……お、恐ろしい……なんて恐ろしい男たちのマジバトルなんだ!!)」
「それにしても、各人の戯楼使用報告書なんて頼んでいなかったハズなんだが……誰が送ってくれたんだろうか? まぁ選考の役に立ったから良かったんだが」
「!! まさか、お前……」
「ん? どうしたんだい、風漢? 人の一生分の経験の差というものが、ようやく分かったのかな?」
「貴様……今日という今日は許さん!!」
「ふふ、あははははは!!」(←勝ち誇った哄笑)
「さて、次の発表に移ろうか!」
「はい……(もうかなり疲れたな。先はまだ長いというのに……ハァ↓)」
「こら桓?、もっとシャキッとしろ。主上の憂いの種になれば、たとえお前といえども……」
「はい! 浩瀚様、俺はもの凄く元気です!!」
「続いて! 悩める心優しき青年、儚さ抜群の癒し系の一人である天の玄武は祥瓊だ!!」
「……お前、それでいいのか?」
「あら。いいもなにも、私はこれで大満足しているわ。失礼ね」
「ふふ、祥瓊はどんな姿をしていても美しいな」
「あら、祥瓊! 貴方もだったのね。似合っているわよ」
「陽子、鈴、ありがとうvv あら、鈴だって可愛らしいじゃない! 少年の格好をした美少女だなんて、良い線いってるわよ」
「も、もう! からかわないでよ」
「(女って互いを褒め合うのが好きだよな……俺には理解できない世界だ。しかしコレもつかの間の休息に過ぎないんだろうな……そろそろ己の殻を破ってツッコミから卒業したいな……)」
「皇族の青年役は祥瓊でしたか。彼女ならばそれも相応しいのでしょうね」
「ああ。彼の役は祥瓊しかいないと思ってな。悩み惑う様は過去の祥瓊と重ねることが出来るし、皇族故の高貴な佇まいも祥瓊ならば完璧に表現できるだろう。これ以上ない逸材だ!!」
「はい。私も主上の人選の素晴らしさに敬服の至りでございます」
「……(浩瀚様……やはり女性には敵意を向けないんだな。ていうか祥瓊なら主上が云々というよりも、自力で報復をしてくるから尚恐ろしいものな……)」
「何を考えているのかしら、桓??」
「い、いや! 確かに皇族の気品を醸し出せるのは祥瓊に他ならないとつくづく思い至り奉りそうろうろうろう……」
「どうしてそこまで動揺するのかしら? 何か含むことでもあるの?」
「いや!? そんなこと一言も言って無いじゃないか!」
「んん? 八葉の癒し系コンビは仲が良いな! その調子で八葉のみならず神子も鬼も存分に癒してくれよ☆」
「(今の会話のどこが仲良しなんだー!?)」
「もう、陽子ったら! そんなことないわよ!」
「王族の青年なら、まさしく王たる俺でも良いと思わんか?」
「……何故それを僕に言うのですか」
「延王さんが青年役か〜せめておじさん役ぐらいがいいんじゃないか?」
「何!? 青年役は務まらぬと言うのか!?」
「いや、だってよ〜やっぱ延王さんは立派な大人じゃねーですか。さすがに青年はちょっと……無いな!」
「……兄さん(天然の断言ほど痛い言葉は無いよな)」
「利広殿! 先ほどの延王との演武、とても素晴らしいものでございました! 後ほど時間がありましたら、是非この李斎とも一度お手合わせをお願いしたく存じます!!」
「(李斎殿ー!! 先ほどのは演武でも何でもない死闘(と書いてマジバトルと読む)だったでしょう!? まさかの李斎殿天然説!? いや待て!? 最初から彼女はそんな雰囲気があったような……!!)」
「ああ、貴方は地の青龍の李斎殿だね。僕でよければ喜んでお相手しよう。私たちは同じ八葉、いわば国を超えた仲間だからね」
「(そしてやっぱり利広殿も『同じ八葉』という言葉を強調なさるんだな……やはり誰も彼も己の座を譲るつもりが全然無いってことを全開にしているな……特に男性陣は!! ……いや、俺はそんなこと無いぞ!?)」
「ありがとう存じます!」
「利広殿。決してその椅子をあの馬鹿には譲らぬよう、拙からも謹んでお願い申し上げます。これ以上アレをのさばらせると勘違いを起こさぬとも言えません」
「(うわぁ……朱衡殿はやはりコレか……しかしその方向性はうちとは大違いだ……)」
「ふふ、随分な言われようだね。少し風漢に同情してしまうよ」
「そのような情も、どうぞそこいらの溝に捨ててお終いなさい。主上はすぐに付け上がりますから」
「そうかい? (本当に随分な言われようだな。風漢、お前放浪している暇があったら国で少しは真面目にした方が良いんじゃないかい? 僕には言われたくないだろうけど)」
「ちょっと桓?! 貴方さっきからどこを見てるの!? ま、まさか……李斎殿に……!?」
「ち、違う何言っているんだ!? 俺はツッコミとして正しい間の取り方を……」
「貴方こそ何言っているのよ!!」
「はは〜この仲良しさんめ〜☆☆」
「主上ー!! 貴方の目は節穴ですか!? どこが仲良しに――」
「ちょっとー!! 陽子に酷いこと言わないでよ!!」
「グフォ!!」
「祥瓊、ナイス右ストレート☆」
「女性を怒らせるとは、桓?もまだまだだな」
「すげーな……吹っ飛んでいったぜ……」
「そうだねぇ……(カオスだ。すでに収集がつかなくなっている……)」
「さーてついに八葉は最後となりました! 不思議な魅力に溢れた不器用な美青年、青年の魅力と幼子の愛らしさを同居させた地の玄武は、犬狼真君たる更夜殿だー!!」
「ちょ、主上ー!? ちょ、ちょちょちょーっと待って下さい!? せめて国を超えることまでは許容できます! 慶東国歌劇団と銘打っておきながら国境無き歌劇団みたいになっていても、ギリギリ他国の人間は受け入れられます!! でも真君はダメでしょう!? アリエナイでしょう!!? 国を超えてとうとう人の枠すら越えてしまっていますよ!!??」
「何を言っているんだ桓?! すでに人の垣根は越えているじゃないか! 最初に景麒を紹介した時に☆ いやーそれにしても紹介直後のツッコミは久々だったからとても嬉しいよ……グッジョブ☆☆」
「そんなこたぁどうでもいいんですよ!! 台輔もギリギリ人間です!! でも真君はどうみても天の御方です!! そこは越えちゃいけないでしょう!?」
「左将軍、私はギリギリでもなんでもなく麒麟です。間違えないで下さい」
「ふぅ……桓?、兵士は身体を鍛えれば良いという問題では無いんだぞ。小学からやり直すか?」
「あらまぁ……桓?ったらついに痴呆かしら?」
「え、青将軍ったらもうボケですか? 私の相棒役がボケっていうのは嫌だなぁ」
「お、少学行くなら俺も付き合おうか? 実はちょっと興味あったんだよな〜!!」
「……兄さん、少学じゃなくて小学だよ。州レベルじゃなくて里レベルだよ」
「……お前ら……!! 台輔と虎嘯以外は分かってて言ってるんだろ!?
いい加減にしろー!!!」
「慶の者たちは元気だなぁ。俺たちには無い若々しさだ」
「はは、一緒にしないでくれるかい? 僕は見た目は青年だからねぇ……おじさんの風漢と同じにされるのは心外だよ」
「おいおい、人の一生分の経験の差があるんじゃなかったのか? 利広おじさんよ」
「悲しいことだよねぇ……見た目はおじさんなのに、青年の僕に及ばないなんてさ☆」
「よし、そこです! いけいけ、そこでサクッと……」
「おお! なんという身のこなしでしょう! さすがは主上から2本取ったという延王……それに対する利広殿の軽やかな身のこなしも素晴らしい!!」
「チッ……やはり主上は手強いですね。どうせいつの間にか消える傷なのですから、ここは一つ限界まで疲労が溜まるような大怪我をしてもらえないものでしょうか……そうすれば執務室に縛り付けるのも幾分か楽なものを……」
「朱衡殿、延では王を執務室に縛り付けておいでなのですか?」
「はい。全くお恥ずかしい話ですが、あの馬鹿殿は失踪することにかけては世界一でございまして」
「そうですか……でしたら戴でもよく使われている素晴らしい実を差し上げましょうか? これは心を込めて育てれば、毒々しい花を咲かせた後一つの実を落とします。その実は呪文を唱えると鞭に変化し、狙った獲物を決して離しません。私は一つ余分に持っておりますので、種を差し上げましょう」
「……ありがとうございます、李斎殿。しかし、李斎殿はその実を何にお使いなのですか?」
「もちろん、鍛錬から逃れようとした兵士たちや、執務から逃れようとした高官たち、まれにムシャクシャして暴れ出した主上をお止めするのに活用しております」
「……泰王がムシャクシャして暴れ出すことがおありで?」
「はい。ひととき台輔の行方が知れぬと分かると、執務を放りだして飛び出そうとなさいます。この実を手に入れてからは、お止めするのが随分と楽になりました」
「そうですか。素晴らしい実をありがとうございます。これだけでも八葉の一人としてこの場に招かれた意義があったというもの。李斎殿のお心に報いることが出来るよう、今後はより厳しく徹底的にうちの馬鹿を縛り付けるよう精進いたしましょう」
「それほど喜んでいただけるとは、私も嬉しく存じます。それでは私も、朱衡殿の腕に負けぬよう、よりいっそうの錬磨を重ねていく所存でございます。今度、文で語らいましょうね」
「はい。喜んで」
「……君さぁ、少しは真面目に仕事したほうがいいんじゃない?」
「……そうだな。俺も少しばかり己の身の振り方を後悔した」
「……ろくた、僕はどうすればいいのかな?」
『クゥゥゥウウン』
「さて、ようやく物語の主賓たる八葉が出そったわね」
「そうですね。これまで数々の笑いと多くの苦難を乗り越え、ようやく八葉の紹介が済みましてございます」
「ここでもう一度、改めて彼らを紹介しましょう」
「まずは天の青龍(頼久)でございますが、景王曰くの『特別げすと』がご用意されている様子で、最後に回されています」
「楽しみね。最後といえば大トリですもの。きっと凄い人が招かれているに違いないわ」
「地の青龍(天真)は戴国きっての将軍である李斎殿」
「あの一本気なところを見初められたんでしょうね。とても気持ちの良い方だもの。少し危ういところも見受けられるけど」
「天の朱雀(イノリ)は慶の女御である鈴殿」
「そういえば慶には王宮の影の支配者である女官が2人いるらしいわよ。その一人かしら。彼女も思いこみが激しくて視野が狭い一面があったようだし、それが共通点だったんでしょうね」
「地の朱雀(詩紋)は同じく慶の将軍である桓?殿」
「意外な選出に見えるけど、結構的を射ているんじゃないかしら? 癒し系って年齢も体格も性別も越えた貴重な存在だものね。景王は良い目をしているわ」
「天の白虎(鷹通)は延の高官たる朱衡殿」
「これは面白い抜擢よね。王に喧嘩を売るほどの真面目さを買ったのかしら。確かに愛人と貶されても執務をこなす官吏というのは中々いないわ。さすが延を支えたと言われる名官吏よね」
「地の白虎(友雅)は……あの、これをそのまま読むのですか?」
「そうよ、早く!」
「はぁ、では……地の白虎(友雅)は馬鹿で間抜けのアホ阿呆タラシのすっとこどっこいアンポンタンのへちゃむくれの利広……殿」
「なんでコイツなんかにしたのかしらね。きっと何か裏で手を回したに違いないわ。景王の負担になるようなことをするなんて、本当最低な男よね利広って」
「……?(え、紹介はこれで終わりですか?)」
「ほら、早く次」
「は、はい。天の玄武(永泉)は慶の女史である……祥瓊殿」
「まさかあの時の娘がこうなるとはねぇ……今の彼女になら十分にやり遂げられるんじゃないかしら? 王族として品は申し分ないし、今は思慮深くなったみたいだしね」
「そうですね……」
「泣くのは後になさいよ」
「地の玄武(泰明)は天仙である犬狼真君です」
「まさかここで真君を持ち出してくるなんて景王も中々やるわよね。誰もが一度は思い付いてすぐに諦めてしまう案を、こうしてしっかりやり通したんだから。彼らは不思議さにかけては互いに一歩も譲らないわよね。方や人形生まれの人間、方や妖魔に育てられた子からいつの間にか天仙……普通の人間には無い奇跡のストーリーだわ」
「さて、これにて途中結果発表を終わらせていただきます」
「私の簡単な解説もお役に立てたかしら?」
「司会・解説は芳国恵州候、月渓と」
「恭国供王、珠晶がお送りしました☆」
改めて主張します。
『これはギャグです! 実際の人柄がベッコベコに壊れていようとも、貴方の広く深い心でどうにか頑張って受け入れて下さい!!』と(笑)
正直な話、口調が全然合っていないし文章が可笑しいところがたくさんあると思うのですが、『ギャグだしいっか』という軽いノリで見ないフリしてます。
真面目に考え出すと気持ちがギャグから離れますからね……(笑)