「ああ、お一人にしてすみませんでした! こちら、粗茶になりますが……」

「こちらは、慶国で大人気の血誉湖です! 甘くて美味しいですよ☆」

「あら鈴、お茶にはこっちがいいわよ。どうぞ、男覇擬です」

「それでしたら血誉湖に合わせて粉乳茶など如何ですか?」

「あ、ありがとうございます。(す、凄い勢いだ……ろくた、僕から離れないでね)」

『クゥン?』

「ほれほれ〜お前にはコレなんかどうだー?」

「兄さん、さすがに天犬にドッグフードは無いよ。せめてこっちじゃない?」

「夕暉!! 血の滴る肉片を振り回したら危ないだろう!? 血が、血が飛ぶー!! ていうかそんな激烈笑顔で肉を持つな!」

「……(フラ〜リ)」

「台輔ー!! お気を確かに……!!」



「おお、これは延でも大ブーム到来中☆の血誉固景麒では無いか!! ……華餌希だったか?」

「これは素晴らしい……黒々と輝く様がなんとも美しい菓子ですね」

「はは! 朱衡、お前にピッタリの菓子だな☆」

「ふふふ。主上、拙にはどす黒く凝り固まった血糊にも見えますが、如何ですか?」

「お、お前! そそそれは慶の二番目の……!!」

「ああ、初めて手にしますが、随分と手に馴染みます。持ち手が手に吸い付くようです。どれほどの研磨の重ねられたのか……ふふふふふ……」



「なんと……延には手練ればかりがいらっしゃるのか……。文官と聞いていましたが朱衡殿の手捌きの華麗なこと……!! 延王が多大な血を流しているような錯覚に陥るほどでございます!」

「本当だ、凄いねぇ……(でも、錯覚じゃないよ?)」



「これは……血誉湖というのですか?」

「はい☆ 『名誉ある鼻血ブー!その勢いは湖の如し!!』という菓子です」

「(鼻血ブー!?)」

「もう陽子! そんな説明の仕方じゃ真君がお困りになるわ!」

「そうよ〜。すみません、真君」

「い、いや……甘くて美味しいお菓子だね。初めて口にしたよ」

「それは良うございました。こちらの男覇擬もどうぞ召し上がって下さい」

「ありがとう」

「こちらのお菓子は『景王も大好き☆ これを食べれば、景王にも勝る男らしい覇気だって擬態出来ちゃうカモ★』という謳い文句で大人気なのですよ」

「そう、なんですか……?(景王は女王だと思っていたんだけど……)」

「失礼しちゃうよな〜私は女の子なのに」

「ふふ、主上……私にとって最上の魅力を抱く女性こそ主上でございますよ」

「ははは! 浩瀚、褒めても何も出ないぞ〜!!」

「(主上ー! マジですマジです目が超本気ですよ浩瀚様はー!! ていうか反応が虎嘯と一緒!?)」

「……、これは何というお菓子なのかな?」

「それは血誉湖華餌希と申します。美味しいですよ」

「夕暉も大好きだもんな」

「……これも甘いね。……あれ、これ食べたことがあるような……」

「これは『華麗に餌付け!女の子の希望を運びます☆』という、可愛い女の子たちの心強い味方なんです」

「もしかして、真君に想いを寄せる女性がお贈りになったんじゃないですか?」

「そうなのかな?(いつだったか、ろくたがくわえて持ってきた物の中にあったような……あの時は口にするまで唸り声を上げるろくたに驚いたんだったな)」

「すでにろくた殿も餌付けされていたのではありませんか?」

「!! あ、え? そうかもしれないね?」

「(浩瀚様自重して下さい……!! 天仙たる真君のお心を読むなんてどんだけ凄いんですか浩瀚様!? 真君がメチャクチャ戸惑っているじゃないですか!!)」



「あっちはいいな〜仲良さげで〜俺たちには華が足りんと思わんか〜」

「風漢、そんなに恨めしそうな目を向けるなら飛び込んでくればいいだろう? いつもの考え無しはどうしたんだ」

「考え無しとは失礼な! 俺はいつだって楽しいものや面白いことに向かって全速前進しているだけだ! しかしそうだな、ここで考えていても意味がないし……」

「それが考え無しだと言っているのですよこの阿呆殿が……今です、李斎殿!!」

「逝け! 黒薔薇鞭姫!!」

「うをぉぉおぉおぉぉおぉ!?」

「うわー……」

「素晴らしい……これがその実の効力ですか」

「はい。畏れ多くも台輔から『黒薔薇女王』の名をいただきましたが、さすがにそれは大仰すぎましょう……そう申しましたら『黒薔薇鞭姫』の称号をいただきました。私の愛武器です」

「そうでしたか。しかしこれは誇って良い武器でございますよ。今の動き、拙には全く目にすることが出来ませんでした。本当に秀逸な武器なのですね」

「武器じゃなくて、実じゃなかったのかな?」

「そんな! 先ほどの延王との演武は素晴らしいものでございました。きっと朱衡殿ならば、私の鞭使いなどすぐに超してしまわれますよ」

「拙程度が李斎殿を超すなど……しかしそう言っていただけるとやる気が出るものですね。今からこの武器を育てるのが楽しみでございます」

「……うん、まぁ君たちが僕の言葉を聞いてくれないことは分かっていたけどね」

「ぎ、ギリギリ言っている……ミシミシ鳴っている……これはヤバイぞおいおいおい!! いい加減離してくれー!! 内蔵が口から飛び出る〜〜」





「全く先に進まないわね〜」

「そうでございますね」

「早く進んでくれないと、私たちの出番は無いんだけど〜あ、コレ美味しいわ」

「血誉湖は女性の口に合うお菓子とのことですよ」

「へ〜よく知っているわね」

「祥瓊様が良くお食べになっていると聞いて私も何度か口に、……あ」

「……月渓、あんた何でそれを知っているの? まさか慶に密偵でも放っているんじゃないでしょうね?」

「い、いえ、とんでもございません!! 実は……青将軍とは文を交わす仲でして……その……折に触れて、よく祥瓊様のことをお書き下さるのです」

「ふ〜ん? 自分から聞いている訳じゃないと言いたいの?」

「え、いえ、その……私はもう、祥瓊様のことを憂慮することは止めましたので……」

「へ〜〜?」

「今は暖かく見守っている最中でございます!」

「(開き直ったわね)」

「ああ、これが血誉湖菓子の新作、血誉湖華餌希太巻きですか」

「薄く焼いた生地を巻いてあるのね……あら、これも美味しいわね」

「粉乳茶と合いますよ、どうぞ」

「ありがと」





「さて〜八葉も出そろったことだし、今度は物語を彩る素敵な脇役たちを紹介しよう!!」

「脇役って……」

「あーもう今はツッコミはいらんいらん。ってワケでさっそくご紹介しよう!!」

「(俺の扱いが酷すぎるー!!涙)」





「可愛らしくもしっかり者の星の一族の末裔、藤姫は桂桂だー!!」





「なんでだー!!!! 主上! 男性役に女性をつけていたのは、役に女性が足りなかったからではないんですか!? なぜわざわざ数少ない女性役に男の子をつけちゃうんですかー!?」

「えー可愛いじゃん、桂桂。なぁ、浩瀚」

「そうですね。さすが、主上のお見立てでございます」

「あー、まぁ確かに可愛いかどうかと聞かれたら否定しにくいところではあるんですが……」

「もーハッキリしないわね! 可愛いでしょう潔く頷きなさいよ!!」

「うをぉぉお!? なんでそこで拳を振りかぶるんだ祥瓊ー!!」

「あ、今度は避けたな。さすが桓タイだぜ!」

「もう青将軍ったら☆ 祥瓊の女心が分からないなんて、まだまだね!」

「(ちょ! これのどこが女心!? 懇切丁寧に説明してくれー!!)」

「ねー鈴お姉ちゃん、これ動きにくいよ〜」

「あら、脱いだらダメよ?」

「あ、これ落としたよ……飾りの一部かな? 付けてあげるよ」

「夕暉お兄ちゃん、ありがとー」



「ほらほら主上、景王に交代を要請するんじゃなかったんですか?」

「そうだよ風漢、今が絶好のチャンスだよ。慶の宰相殿はその気が全くないみたいだし」

「延王、演武をなさるなら黒薔薇鞭姫をお取りしますよ」

「ぐ、ぐるじぃ……」

「……尚隆、それが君の言う王の姿なのか……」

『グルルルルル』

「いや、食べたらダメだよ、ろくた。あーでも甘噛みならいいかな……」

「どうぞどうぞ。内蔵の一つくらい持っていっていただければ、大人しくすることも増えましょう」

「延王は内蔵を一つ失っても生きていけるほどの御仁なのですか!? そ、そうですか……では打倒延王を掲げてらっしゃる主上に、さらなる修練を……」

「ははは☆ 生まれ直す機会がさっそく巡ってきてよかったね風漢! 頑張れ★★」

「うをぉぉおおぉおぉぉぉ!! 俺は負けんゾー!!」

『グゥオォォォオオオン』



「ま、まぁ桂桂が良いと言うなら、俺も受け入れるよ。頑張れよ、桂桂!」

「うん! 僕も陽子の期待に応えられるように頑張る!」

「そうか!」

「うん!!」



「め、目がチカチカする……これぞ正しく癒し系……!!」

「主上、眼精疲労にはこのお茶がよく効きますよ」

「ありがとう」

「(眼精疲労ではないと思うんだけど……)って、兄さん!?」

「おおーなんだか目がワギワギするような……」

「虎嘯!? それは目に入れるんじゃないわよ、普通に飲んで良いの!」

「え、そうなのか?」

「あらあら……はい鈴、これで拭きなさい」

「ありがとう! もう虎嘯ったら!!」

「おお悪りぃな、鈴!」

「(あえて兄さん本人ではなく鈴に布巾を渡すとは……)」



「続きましてー、いてもいなくてもいいように見えて、実は大変重要であるまろ!!」

「まろ? ってなんだ?」

「一人称が『まろ』なのよ」

「そうそう、まろまろしていないクセに自分のことを『まろ』という人なんです」

「物語の当時、貴族がよく使っていた一人称なのだ。勉強不足だぞ、桓タイ」

「……すみません(ていうか鈴の言うまろまろしていないってどういう意味だ!?)」





「そのムカツク言い様は天下一! なんどぶっ飛ばしてやろうと本気で思ったことか、ヲトメを敵に回す不届き者、まろは靖共だー!!」





「おい、まずは痩せろ。お前のでっぷりした体型では話にならん。なに、でっぷりではなくがっしりだ? そんなことどうでもいいんだとにかく痩せろ。まろの良さは苛立ちを感じさせるやせ細った顔と、見るだけで腹が立つ馬鹿にしたような表情にあるんだぞ。お前はたしかに人に不快を感じさせる嫌らしい表情をしているが、それだけではまろの良さは十分に発揮できない。ついでに言えば声も変えろ。常にヘリウムを吸い込み、理由もなくムカツキを感じる甲高い声にするんだお前の声では低すぎる。ていうかお前は悪役にしては良い声をしすぎだぞ能力の無駄遣いだ」



「く、靖共め……私の主上を横取りするとは、一度処刑しただけでは足りなかったようだな……」

「浩瀚様それは思い違いも甚だしいですよ! 明らかに主上が全力をもってして額を指弾しまくっているじゃないですか!? 靖共のデコが絵巻物でも見たことがないくらい素晴らしい山形になっているのが目に入りませんか!? あれは毎秒数十回の奇跡の突っつきですよ!?」

「……あれ、僕の記憶違いかな。靖共は確か過去に処罰されたハズじゃ……」

「夕暉。人には時として物事を深く考えることを止めた方が良い時もあるのよ」

「そうよ、鈴の言うとおりだわ。ヲトメの空想のためなら、如何なる事態も思いのままなのよ」

「そ、うだね(ここは頷くのが正しいと僕の優秀な頭脳が言っている!!)」

「……主上、ご成長なされたのだな……あれほど恐れを抱いていた元冢宰に、あんなにハッキリと物を言えるようになられて……」

「台輔ー!! 言うだけに止まらず攻撃すらしている主上に向けてかける言葉がそれですか!? そんな孫を見るようなキラキラしい目をしないでくださいー!!」

「良かったな、景麒。俺たちが暖かく見守り、助言を繰り返したおかげだ。これほど陽子が大きくなれたのも、一重にお前の尽力が良かったからさ」

「延王……」

「(うわぉー!! 延王が外堀を埋める作戦に出ているぞ!?)」

「延王君は何か勘違いをなさっているようでございますね。所詮他国の人間に出来ることなど限られております。主上のご成長は、我々慶の人間が尽力した賜であり、そもそも主上自身が素晴らしい才をお持ちだったからに他なりません。台輔、延王君の口車に乗ってはなりませんよ」

「……そうでしたね。延王、肩から手を退けていただきたい」

「……チッ」

「(ギャー止めてくれココで日頃明るい延王の闇を放出させるようなこと言わないで浩瀚様ー!!)」

「さらにもう一丁! 今です李斎殿!!」

「逝け! 黒薔薇鞭姫、麗しき微笑みの舞い!!」

「はっはー! 何度も捕まると思ったら大間違……うをぉぉぉおおぉぉぉおおお!?」

「へー、これが麗しき微笑みの舞いか〜手も足も出ないね、風漢」

「この技は、ご覧になった台輔の浮かべた微笑の素晴らしさから名をいただいております。あの時は見ていた誰もが歓声を上げ、台輔の微笑の美しさを褒め称えたものです」

「へぇ、そうなんだ(それってもしかして阿鼻叫喚の間違いじゃないかな?)」



「……人間とは常に進化していくものなんだね。凄いね、ろくた」

『ガシガシガシガシ』

「をい! 食ってる喰ってる食われてる!! 止めろ更夜!」



「とりあえず主上のことはこれで許してやっていただけませんか」

「ああ、朱衡殿。素晴らしい采配ですね。まさに私が心の鞘を取り出す寸前でございました」

「心の鞘とは雅なお言葉、さすがは景王をお支えしている浩瀚殿です」

「(つまりアレですか。理性の殻を象徴するデスサイズを抜き出すと言うことは、自制心を皆無にして思いのまま攻撃を繰り出すと……そう言うことですか浩瀚様!?)」



「ほーれほれ。コレで少しは美味しくなったかな〜?」

「ゲホッゲホッ、ちょ、利広! なんだそれは!? っぶえっくしょん!!」

『ガシガシガシガシ』

「あまり塩分を多めにしないでくれるかい? ろくたは薄味が好みなんだ」

「それは申し訳ありませんでした、真君。宜しければご自身でお振りになりますか?」

「塩コショウかー!?」

「おや、私の黒薔薇鞭姫も味付けを喜んでいるようです。そうか……お前もたまにはお洒落がしたかったんだな」

「(塩コショウがお洒落!? 李斎殿ー!?)」



「ねぇお姉さん、それは何なの?」

「ああ、これは黒薔薇鞭姫と言って、戴でも貴重な面白い実なんだよ」

「へー凄いね!」

「け、桂桂!? だだだダメだぞそれに興味を持ったら! 駄目な大人になるぞ!?」

「桓タイ! そんなこと言うなんて、李斎殿に駄目な大人と言っているような物じゃない最低だわ!!」

「グフォ!」

「青将軍見損ないました!!」

「ガフォ!!」

「おー!! さっきよりもさらに飛んでるぜ〜!!」

「……女の子って凄いよね」










   


鬼の一族に行く前に、まずは素晴らしき彼らを紹介しました!笑
ゲームしてて分かりました。「まろ」が大変重要なキャラであることが!!
ゲームを知らない方はとりあえず『平安貴族のムカツク男』と思っていただければ。しかし彼は物語の分岐点にも恋愛イベントにも多様に大活躍してます。ありえないほど凄すぎる脇役です。こいつがいなければ物語は途中で躓くこと大です。なので悪の総大将、セイキョウ閣下に是非ともこのムカツク役を進呈します☆笑 しかしココまで重要なキャラなのに名前がありません★ そこらへんも素晴らし過ぎる♪♪