『全くお主ときたら! 我らを騒がせるのも大概にしろ!』
『なんだよー! 兄貴たちだって気付かなかったんだろ〜! アンタも笑ってないで何か言ったらイイダロ!』
『火維殿。先ほどのようにぜひ班渠とお呼び下さい』
『んぐっ……』
『クックックック……そうだな。お主は班渠殿のことをスゴイと思っておるようだし、そんな呼び方をするのは良くないぞ』
『な、なんだよ……クッソーもう二度と言わネェ!!』
プンプンしながら先に飛んでいく火維に、班渠と太郎は暖かい目を向ける。
なぜかその目は、仕事に疲れているが一時の幸せを目にした時のサラリーマンと全く同じだった。
(苦労してるんだな……)
彼らが3匹揃って向かう先は、今回の騒動の原因を生んだ場所。
ホグワーツの地下深くに作られた『秘密の部屋』だった。
『火維よ、お主が呪を解いてまで戦ったという相手、どれほどの強さであった?』
『ありゃマジ強いよ。オレもオレのことけっこー強いと思ってるケド、オレと張るんじゃないの? ま、それも呪を解く前の話だけどサ』
『巨大なヘビでしたよね』
『うん。もー今まで見たこと無いデカさだった。しかもアレ、絶対目がヤバイ。オレ最初に潰したもん、アイツの目』
『どのような効果を持つか、分かったか?』
『んー……ナンダロ……分かんないけど、見られただけで身体が固くなる感じがした。たぶん目が合ったら、もっとナンかあったんだと思う』
『身体の動きの速さはどうでした?』
『ソレも凄かった! あんなデケー身体じゃないみたいにビュンビュン動くんだゼ!? 何回か潰されそうになった!!』
言葉足らずの思考足らずな火維に、太郎と班渠が答えやすいように質問をしていく。
その繰り返しのおかげで、なんとか2匹にも火維曰くのラスボスの全容が見えてきた。
ちなみにこの場所、壁一枚向こう側にはすでに秘密の部屋がある。
初めての異界での猛獣?との対戦に、彼らは意外と緊張していた。
『それでは、行きましょう』
『極力敵の目を見ないこと』
『んで、とりあえずオレがもう一回目を潰しに突っ込む、と』
もしかしたら脅威の回復力を持つ生命体なのかもしれない。
もしそうじゃなかったら泣きっ面に蜂ならぬ潰れ目に嘴になるが、こちらの安全優先のために致し方ない。
というわけで彼らは突入した。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
『あの、あの、私、えっと、その……』
『……オレ、もー帰ってイイ?』
『……駄目ですよ、火維殿。女性には優しくするように主上に言われたでしょう』
『……そうだぞ、火維。むしろ我々こそこの場を立ち去って調査の続きを……』
『え、オレをおいていくのかよ兄貴! 兄貴兄貴兄貴ー!!』
『えーい五月蠅いぞ小僧! こんな時ばかりそのように連呼するでない!!』
『……あ、その……え、と……あの……』
『はぁ……驃騎、冗祐、ジュウサク……誰でもいいから変わってくれ』
班渠の数百年に一度の超超珍しい泣き言が、秘密の部屋に寂しげに木霊した。
それでもそこに女怪の芥瑚の名前が無いのが彼の紳士っプリがよく見える。
彼の背後には、ギャイギャイと言い合いをする太郎と火維の姿。
そして、そのさらに後ろに大きな体をこれでもか!と縮めてもじもじしている巨大ヘビの姿があった。
彼女はかなりのシャイガールだった。
さっきから何かを言いかけては恥ずかしげに俯く、の繰り返しである。
『もーほんなごときつか……』
これまた数百年に一度聞けるか聞けないかと言われる、超超珍しい若かりし頃の班渠の方言(笑)がつるっと滑り出した。
班渠は本当に疲れ果てていた。
ラスボスはバジリスクでしたー☆
城を調査していたら衝突は必須ですよね。女性というのは全力捏造です。