陽子は目の前で薄い笑みを浮かべたままの少年に心底詫びた。
「すまなかった。いくら何でもあの呼び方は(あまりにも直接的表現過ぎてすぐにバレるから)いけないよな。君と出会えた幸運に喜ぶあまり、つい思ったことを口に出してしまった」
本当に、ついつい喜びのあまり思ったことをそのまま口に出してしまった。
まさかこの地では極東と呼ばれる日本のアニメのファンがいるとは思わず、喜びのあまり多少理性を失ってしまったようだ。
……面白さを求めて、わざと言ったんじゃないかって?
おや、君はよく私のことが分かっているじゃないか……これももしかしたら私の『面白さへの飽くなき探求心』が生み出した無心の一言だったのかもしれないな。
ふむふむ、そう考えると私も随分成長したものだ。
そして成長に気付かせてくれたこの少年には、多大なる感謝を感じるな。
陽子が内心では豪速の思考の乱舞を見せていようが、少年は変わらぬ笑みを浮かべたままだった。
最初に話しかけられた時と全く変わらない笑みは、陽子にしてみれば作り物の笑顔だということがよく分かる。
しかし。
ほう。
周りの者たちは組み分けに驚いたのか、固まっている者や額を打ち付けた者までいるのに、彼は私に笑みを向け続けたのか。
なるほど。
やはりイギリスは紳士の国なのだろうか……彼も私のことを立派なレディー☆として扱ってくれているのだな。
……いやぁこの年でレディだなんて、照れるな☆
それに、驚きに負けず己の表情を浮かべ続けるなんて幼いのにヤルナ。
10代なんてほんの赤児ではないか。
すでに陽子の時間感覚は人間には到底計り知れぬ程長期戦仕様である。
10代なんて、陽子にとっては己の100分の一も生きて……いや、これ以上は年齢がバレるので自重するそうです。
そうして陽子がひっそりと内心で少年−ドラ−の株を上昇させている間も、彼は得意の笑みを浮かべ続けた。
……というより、浮かべたまま固まっていた。
スリザリンのテーブルの人間たち及び、うっかり聞き耳を立てたせいで聞こえてしまったらしいレイブンクローの生徒たち数人が己を取り戻すのは、組み分けが終わってダンブルドアが元気の良すぎる挨拶を終わらせた後だった。
目の前に豪華な食事が表れてやっと、彼らの目に光が戻ったらしい。
「ドラ、私のことは陽子と呼んでくれ」
「あ、ああ……分かったよ。ヨーコ」
始終陽子のペースでその日の会話は終了した。
めちゃ短い。
陽子はいつまでも勘違い。それも無意識の面白追求なのか?笑