「なるほどなぁ。つまり跡部は嬢ちゃんに隠し事されてるんが嫌やったから、インサイトで見抜こぉ思った。
 そやけどそれを睨まれてるて勘違いした嬢ちゃんは、跡部に嫌われてるんやないかぁ思て別邸に引っ越してしもぉたワケや。」
「それでーあとべーは恵菜ちゃんにどう接していいのか分からなくなっちゃったんだよなー!!」
「へー! 跡部にも悩みとかあったんだな」
「激ダサだな」
「なんだか複雑ですね」
「……アホらしい」
「……」
「ウ、ウス」 

望んだ情報を得られた忍足は大変素晴らしい笑みを浮かべている。
便乗するようにジローが続きを言えば、他の者たちは哀れみの視線を跡部に向けた。
微妙に疲れた様子の跡部は、珍しく無言だ。
樺地が気遣わしげに声をかけている(ウスだけどね) 





あの後、コートに着いてジローをたたき起こして練習を始めた。
しかしさっきの出来事が頭から離れない者が多く、集中力が続かなかった。 

こうなったらまずは気になることを消化してから練習に集中すべきだ!

と勝手に判断した忍足は跡部に事情を聞き出すことにした。
5分休憩のはずが、休憩を始めてすでに1時間以上経っている。
跡部から事情を聞き出すために氷帝の天才は全力を出した。
天才の名は伊達じゃない。
途中でジローを叩き起こして決定的証言を得たり、樺地の様子を読み取ったり、あの手この手を使って跡部から聞き出した。
そうして跡部は思いの丈を一部始終知られることになってしまった。南無 





「……もういいだろう。練習に戻るぞ!」 

この居たたまれない空気を変えようと跡部は叫んだ。 

なんで俺様がこんな思いをしなきゃならねぇんだ!! 

たぶん数の暴力というやつだろう。 

「えー! でも俺はまだ日吉のことが気になる!!」 
「あ、そういえば」 
「そうだな、知り合いだったんだろ?」 
「そうだな……俺様の話を聞いてたんだ。てめぇも話すよなぁ、アーン?」 

騒いだ向日、思いついたような鳳、素直に聞く宍戸。
それを聞いて思い至った跡部も凶悪な笑みを浮かべて日吉に聞いた。
秀麗な顔の凶悪な笑みは一種の視覚の暴力だ。
綺麗な分余計に怖い。 

「……幼稚舎に通っていた頃、何度か武術の相手をしてもらったことがあります」 
「ほぉ……。日吉の相手が出来るっちゅーことは強いんか?」 

これ以上黙っているのも難しいかと思った日吉は眉間にしわを寄せつつも答えた。
忍足はその答えにさらに興味をそそられたようである。 

「へーあんなに小さいのにな!」 
「お前人のこと言えんのか?」

なんだよ宍戸!それはカンケーねーだろ、クソクソ!あはは、ガクトのちびー!な、お前は俺とあんまり変わらないだろジロー!!ま、まあ落ち着いてください向日先輩。うっせーなてめぇらは黙ってろ樺地ぃ!!ウス。 

向日とジローは樺地に口を押さえられてもごもご言っている。
なぜか宍戸も一緒に樺地に口封じをされている。
樺地、腕が三本あるのか? 

「で、どうなんだ。日吉」 
「……俺が勝ったことはことはありません」 
「へぇそら凄いなァ」 

強制的に騒ぎを静めた跡部は再度日吉に問いかけた。
日吉は苦々しそうな顔で答えている。
たしかに少女に勝ったことがないとは答えづらいものだろう。
忍足はすでに目がマジだった。興味津々だ。
後ろで鳳がすごいなぁと呟いている。
樺地に捕まった三人も同様にすげー!という表情だ。 

「おそらく、俺が勝てることはないと思います」 

そう呟きながら虚空を見つめた日吉の目には尊敬の思いがこもって…… 



「あ」 



いたのだがいきなり驚愕の色を浮かべた。
むしろ顔全体が驚きに染まっている。 

「ん? なんや?」 
「アーン?」 
「どうかしたの、日吉」 
「なんでここに……」 

すっと日吉が指し示した方向には 

「……恵菜」 

ぽつりと日吉が呟いた。
その話題の少女、恵菜が佇んでいた。 





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