会議室には珍妙な空気が流れていた。
上座に座る四代目火影はめそめそとしている。
そばにいる老人3人組(三代目とご意見番)はぐったりと疲れ切った様子である。
その場に集う木の葉を代表する一族の長たちは呆れた表情をしている。
ミニ九尾は毛並みが乱れ、モノクロになっている(目の錯覚か?)
ただ一人火影夫人のクシナだけはにこにこと笑っている。
身重なのにこんなとこにいていいのだろうか。
「……なぁ、いい加減俺たちにも分かるように説明してくれねぇか」
奈良家当主―奈良シカク―が頬杖を付きながら呆れたように言った。
会議中に頬杖を付くなどいつもなら言語道断、この男でもそんなことはしない。
が、今のこの状態がいつもとはかけ離れていた。
「そうだよミナト。早く教えて欲しいな」
うちではいのちゃんが僕の帰りを待っているんだから!!
内心の親ばかを隠し切れていないのは山中家当主―山中いのいち―だ。
穏やかそうな顔をしているが、全身から早く話せ〜とオーラを出している。
「……ふぅ」
秋道家当主―秋道チョウザ―は先ほどからお茶を飲んでばかりだ。
どうやら空腹をお茶で紛らわしているようである。
「……お前の話は要領を得ない」
油目家当主―油目シビ―は、彼だけがいつもと変わりない様子で座っているように見える。
しかし声には若干の疲れが見え隠れしている。
「いい加減にして頂けませんか、四代目」
ギリッと四代目を強い視線で射抜いているのは、うちは家当主―うちはフガク―である。
彼はこの場にいることに多大な自制心を要していた。
木の葉最強と言われた自身の一族が適わなかった相手―九尾―が、目の前に居るのである。
「……夫人、夫人は何かご存じないのですか?」
諦めたように打開策を提示したのは日向家当主―日向ヒアシ―だ。
当主陣のなかでも若干年長の彼は、会議でも気を回すことが多かった。
「あら、ごめんなさい。私は四代目と同じでほとんど何も存じておりませんの」
クシナはそう言って周りの者に申し訳なさそうに謝った。
その場の者たちはもうダメか……と思って会議をお開きにしようと思ったのだが。
「でも、九尾さんはあの子の力について何か知っておられるようでした」
その時、会議室中の視線がミニ九尾に注がれた。
……これに里が襲われていたのか……
ちょっと皆は思ってしまったのだが。
だって九尾はそんな面影もなく真っ白になっているし。
「九尾殿、何かご存じならば教えてくださらぬか」
この場を代表して三代目が問いかけた。
ようやっとまた引き締まり始めた会議室の空気を感じ、復活したようである。
すでにめそめそ四代目は放置だ。
『……なぜ我が答える必要がある』
ふんっと視線も向けずにのたまった九尾は、とりあえず色を取り戻してゆったりと体を休めている。
ギリギリと誰かの苛立ちの音が聞こえた。
「私も知りたいですわ。だって娘のことですもの。……九尾さん。仲直りには協力者が必要だとは思いませんか?」
クシナは咲き誇るような満開の笑顔で九尾に問いかけた。
なんだそれは
当主たちの困惑に満ちた視線、なにを馬鹿なことをと言いたげな視線が突き刺さった。
まさかそんなことでこの九尾が口を割るのか?
『母殿がそう申すのならば仕方がない。何が知りたい』
ええー?
変わり身の早い九尾にみんなビックリだ。
さっきまでそっぽを向いていたのに、その顔はクシナにしっかりと向けられている。
そして九つの尾が微妙に揺れているのは目の錯覚だと思いたい。
「あの力は何なのですか」
答えてくれると知ったフガクはさっそく一番気になっていたことを聞いた。
聞くところによるとその力は目の前の九尾を一撃で倒し、里中の負傷者の傷を癒したらしい。
最強の妖魔を一撃で倒すなんて信じられないが、その証のように目の前の九尾はその娘に降ったという(実際はペットになったのだが)
また、里中の負傷者を癒すだなんてそれこそ本当にありえないことだが、娘の手からその光が溢れるところを見たと数人の暗部が証言している。
力に誇りを持つうちは一族として、なんとしてもその力について知りたかった。
その力に興味を持っていたのは誰も一緒だ。
どの当主も答えを待ち望むように自然と前屈みになり、老人たちもぐっと手を握りしめた。
『……』
しかし九尾はツーンとしていた。
答える気はさらさらないぜばーろぃというオーラがビシバシ出ている。
あれ、答えてくれないのか?
皆が不審に思いだした頃。
「私もそのことが知りたいのです。あの力はあの子に負担はありませんの?」
『使いすぎなければ大丈夫だ』
すっきりきっぱり九尾は答えた。
バキィ
フガクは目の前の机の一部を破壊した。
すげー勢いで今にも九尾に襲いかかろうとしていたが、周りの当主たちが必死に、超必死に止めている。
待て待て、気持ちが分かるが落ち着けって、な!
気持ちは分かる!だがせっかく動き出した会議を止めることはない!
おおお落ち着いてください!チャクラ、チャクラが漏れてますよ!?
……!!
ま、まぁ知りたいことは少しずつ、分かりますって、ね!?
こんのクソ狐がぁぁああああ!!!!
老人たちはため息。もうため息しか出ない。
つまり九尾はクシナの質問にしか答える気はないようだ。
こうなったらクシナ夫人の活躍に期待するしかなかった。
皆の期待に満ちた視線がクシナに集中する。
「それで、あの力はどういったものなのですか?」
それだ!それが知りたかったんだ!!
皆の心の声が木霊した。
ようやっと自分たちは知りたいことを知れるのだ、と期待に胸を躍らせた。
口を開きかけた九尾を見て、期待は最高潮まで高まった。
……みな、油断していたのかもしれない。
ピカッ!!
いきなり光の満ちた室内に、人々は反応できなかった。
気づいたときには光は収まり、光の中心部と言える場所には幼い少女が立っていた。
「「「!」」」
「「「! な!?」」」
「「「な、なんだ!?」」」
「あら?」
『!』
「――!!」
その場にいる者たちの驚きの声が溢れた。
一名のんびりとしているが(この人が誰だかもうみんなには分かるよね☆)
「――ルイナっちゃぁぁあああああん!!!」
めそめそきのこを生やしていた四代目は黄色い閃光の本領を発揮した。
その早さについて行けずきのこは舞い散った。
彼は音速でルイナに近づくと、ぎゅぅぅぅうっと娘を抱きしめた。
しかしながら久しぶりに会った娘は鬼だった。
「いや! はなして!!」
幼子とは思えない鋭い声を上げると、華麗な身のこなしでミナトの拘束から逃れた。
その身のこなしにヒアシは微妙に感動していた。
柔術を極める日向家当主のお眼鏡に適う動きだったらしい。
ガーン
ミナトはルイナに逃げられた体勢のまま固まっていた。
きのこを生やすほど会いたくてたまらなかった娘に拒絶されたのだ、無理はない。
固まったミナトを尻目に、戦闘態勢に入りかけていた当主たちは緊張を解いた。
不審者が侵入したのかと思ったが、目の前の一幕で火影の娘だと分かったからだ。
(誰か、里長が不審人物に飛び込んでいくのを止めてやれよ)
むしろこれはチャンスだ……!
今までどこに雲隠れしていたのか知らないが、力の事を知る絶好の機会である。
どんなに調べても調べても調べても調べても……力の秘密が分からなかった。
(その事を思い出してフガクはちょっとイラっとした)
目の前の少女に秘密が全て詰まっているのである。
もう解体してでも知りたくて知りたくてたまらない (あぶねー)
フガクに限らず、誰も彼もその力は気になってしょうがない。
もうこの里中の者が気になっているといっても過言ではなかった。
里の小さな英雄の不思議な力が最近の大人や子どものうわさ話のタネになっている。
酒の肴になっている。
当主たちはこの会議でなんとしてでもその秘密を探り出してこいと厳命されていた。
一族の上役の者や、はては妻や子にまで。
聞くまで帰ってくるな!と妻に言われた男もいる(誰とは言わない)
今までは里の復興のことが最優先で、この力のことは後回しになっていたのだ。
知ってても知らなくても復興は出来るし。
しかしこの会議であらかた復興の指示について目処がつく予定だったので、ここぞとばかりに四代目に質問した。
……ら、四代目は泣き喚くし(今までの威厳ある姿は何処に行った)
老人たちは何かを思い出してとお〜い目をするし(そのまま天に召されそうだった)
このために呼び出された九尾は白いし(尻尾を踏みそうになった)
夫人はにこにこしているし(彼女だけいつも通りだやっぱ強者だ!)
(あれ、なんか説明しているこっちが疲れてきたぞ?)
「あら、お帰りなさいルゥちゃん」
「ただいま、まま」
父の屍を乗り越えて、娘は母に向き合った。
先ほどの惨劇とは大違いの母と娘の美しい再会劇が成されている。
とりあえず会話が途切れたところで質問しよう、と当主たちはお互いに目配せをした。
考えることは皆同じだ。
まぁ会話を待ってあげる大人の余裕は残っているようだ。
可哀想に、この時に遮ってでも問いかけていればまだ望みはあったのに。
「まま、あのね。ままもいっしょにあそびにいこう?」
「まぁ」
「おともだちをしょうかいしたいの」
「私が行ってもいいのかしら?」
あれ、なんだか会話が妖しい方向に行きだしてるような気がする
しかしもう当主たちに母と娘の会話を遮る余地はなかった。
なぜなら二人と彼らの間に塞がるように九尾がにらみを効かせているからである。
その姿はさながら守護者(ガーディアン)であった。
どうやら九尾は点数稼ぎをすることにしたようだ。
たらり
当主たち、九尾を超えて行くべきか真剣に悩む。
しかしアレはいちよう里を壊滅寸前までもって行くほどの妖魔……
双方睨み合いが続く中も会話は続いている。
「うん。ともだちのぱぱはいいよっていったよ」
「じゃあ私もご挨拶に向かおうかしら」
「やったぁ!」
「お友だちのお父さんはなんてかたなの?」
「しまきさんっていうんだって」
あれ?
九尾と睨み合いをしていた当主たちはなんだか名前に聞き覚えがあるような気がした。
すでに場を諦観していた老人たちは驚愕の表情だ。
その顔をみてやっぱり当主たちは聞き覚えがある(ほどの有名な名前)らしいと思ってその名を脳内検索した。
!!
まさか……!!
「かぜかげなんだよ、すごいよね!」
まじかー!!
当主たちの思いも虚しく、会議室に残されたのは使い物にならなくなった四代目と疲れ切ってぽっくり逝きそうな老人3人組と期待を最高潮で裏切られて憔悴しきった当主たちだけだった。
訂正。
他にも見慣れぬ書簡が二つほど転がっていた。
一通は何時の間に書いたのか、四代目火影から砂の里へのもの。
もう一通はその返答ともとれる、風影から木の葉の里へのものだ。
一通目に目を通した時、皆は呆れきって言葉も出なかった。
内容は、切って削って砕いてすり減らして頑張って厳選して絞り込んで要約すると
『そっちにうちの娘行ってない?居るなら返してマジお願い!断ったらどうなるかわかってんだろーな!?』
というなんとも理不尽極まりないものだった。
ちなみに本書の8割が娘の特徴を挙げるとして、いかにうちの娘が可愛いかを切々と長々と語っていた。
しかしどんなにこの書簡がふざけたものでも、確証もとれないようなことで戦を吹っ掛けようとしているも同然だった。
そして風影からの書簡にはこのことを盾にとり、常識的な言葉と長さで(ここ重要。うちの火影とは大違い)戦を吹っ掛けようとしたことは黙認するから、そっちの娘と夫人を滞在させろと言ってきていた。
まさか人質にするつもりか!?
と思ったが最後の一文が気になる。
『大切にするから安心しろ』
なんだこれ嫌みか?
当主たちは知らないが、風影親子の意外な共通点である。
そして文章は続く。
『大切にするから安心しろ、不安なら九尾を連れてこい』
とりあえず九尾を招くくらいだから……大丈夫、なのか?
夫人と娘の護衛はとにかく九尾に任せることにした(任せる前に彼らは消えてしまったが)
どうやら2,3日で木の葉に帰ってくるらしいので仕方がないといった感じだ。
本当なら砂と木の葉はそんなに短時間で行き来できないのだが“不思議な力”で全てが片づくようだ。
もうどうにでもなれってんだぃ。
しかもそんな短い期間しか滞在しないのなら、今から砂の里に迎えや護衛を送り込むのも無駄になる。
諦めて帰りを待つしか残されていなかった。
何かを知っていそうな九尾も居ない、不思議の本人の娘も居ない、では会議どころではない。
固まる四代目は別の者に預けることにして、当主たちは帰路についた。
ああ、帰ったら上役や一族の者や妻や子に問いつめられるのに……
約一名、2,3日の宿を何処にすべきか悩んでいる者もいる。
すでに火影邸ですれ違う忍たちの期待の視線がグサグサと痛い。
やっと、不思議な力のことが分かったのですよね!?
キラキラ輝く目がそう言っている。
しかし彼らは地位の高い者に詰め寄るようなことはしないので助かっていた。
自然と当主たちの視線が絡み合った。
誰かがクイッと何かを飲む仕草をした。
皆がこくこくと頷いた。
そして彼らは愚痴を肴にヤケ酒パーティへとしけ込むのであった。
ぶっちゃけ時間稼ぎと現実逃避である。
本来ならこのメンバーだけで会議ってことは無いと思います。
本当ならもっと上役の人とかいそう……ていうか確実にいるでしょう。
でももうこれ以上の人数になると、私が把握しきれないのでこの人数におさまりました☆
しかしそれでも老人3人は故意に無視!ずーっと疲れたままにしてます(笑)
【当主陣について】
本編では38,39,42歳のこの方々。この時は25,26,29歳くらいだと思います。
あれ、フガクは生きてたら45歳!?(一番年上!) 後から知ったのでスルーしてます!笑
しかも彼らの年齢で当主ってのは若すぎですね。。
けど、私は彼らしか知らないし(捏造面倒臭いし←一番の本音)彼らを出したいからそういうことにしました!!(ビバ、捏造!)
フガクさんを力に固執する者として熱く若々しくしてします…。
ヒアシさんは常識人の苦労性という立場にしてしまった…。
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