とことこと幼い子どもたちの歩く音がする。
ササッサササッと大人たちの移動する気配がする。


「ねぇこれなぁに?」

「ああ、このさとのめいぶつのまんじゅうだよ」

「おいしいの?」

「さぁ」

「えー、たべたことないの?」

「きょうみない」


可愛らしい少女がこれまた可愛らしい少年(本人には口が裂けても言えないが)の手を引き、ある店の前で止まった。
少女はきらきらと輝く眼差しを目の前のものを見つめている。
少年は握られた手を離す素振りはなく、律儀に少女の質問に答えている。
そんないつもなら見られない少年−里の長の第一子迦陵−の姿に店主は目を丸めていた。
彼は驚きに固まっていたが、ハッと息を吹き返した。
グサグサ突き刺さる視線を感じたからだ。
それは迦陵とルイナの後をつけてきた大人たちによるものだ。

オイコラァァ!固まってないでなんとかしろォォオオ!!

目がそう語っている。


「お、お嬢ちゃん! お一つどうだい?」

「え、いいの!? でも……」

「いやいや、お代はいらないよ! ほら」

「わぁありがとう!」

「よかったね」

「うん! はい、これ」

「……うん」


ルイナは笑顔で半分にした饅頭を渡した。
迦陵は照れくさそうにしながらもそれを受け取っている。
それを見て二人の後方の気配も大きく揺れた。
グッジョブ!と店主に泣きながら親指を立てている者もいる。

いや〜一つを半分こってのは最高だ!!

店主もおなじくビシッ!と親指を立てて返した。
彼は、すげーイイ事したー☆という気分でいっぱいだ。
図らずも砂の里では、忍たちと一般の人たちの交流が盛んになっていた。





迦陵の母に会いに行くことになった二人は、里の商店街を歩いていた。
どうやら今まで迦陵が居た場所は風影邸から離れていたようだ。
そして仲良く手をつないで歩いていたのだが。
いつのまにかルイナは頭にリボンを付けて、首にはお守りをかけ、手首には可愛らしい布を巻き、腰には巾着袋をかけている。
そして迦陵も頭に額当てをして、首にはお守りをかけ、手首にシンプルな布を巻き、腰には巾着袋をかけている。
ちなみにどれもこれもおそろいのもらい物だ。
砂の里が初めてなルイナはどれもこれも興味をもち、あれこれと迦陵に問いかける。
そして迦陵が律儀に答えている間に、なぜか店主が一つどうだい?とくれるのである。
迦陵は、食べ物はともかく身につける物は貰うことを渋っていた。

そんなのガラじゃないよ

しかしながらそこでも活躍するのがルイナである。


「ねぇ、おそろいだよ! いっしょにつけようよ」


すぐにまた会えなくなっちゃうから……

そんな寂しそうなルイナの心の声が聞こえてきてしまっては、強く突っぱねることも出来なかった。
しぶしぶ身につける迦陵。
嬉しそうに側で笑うルイナ。
幸せオーラを大放出(気配隠してる意味無し!)している背後の大人たち。
超満足気な店主。
そんな光景が里のあちこちで見られた。
こうしてルイナは迦陵の側使えにとどまらず、里の者たちにも少しずつ受け入れられていった。






「ん? なんだ?」


風影邸の入り口付近を歩いていたバキは、こちらのほうにざわざわとした気配が近寄ってくるのを感じた。
通常なら忍であれば気配を消してくるものだし、里の一般人がこんなに大勢で風影邸に訪れることは少ない。
もし後者であるならば事前になにか連絡があるはずだし、連絡もなく一般人がこんなに大勢来るならば何かの抗議だろうか?
自然と身体が緊張感を帯びてくる。

何があったのか見極め、風影様に報告しなくては……

そうして身構えていたバキだが、予想を大きく外れることになる。
ふと入り口に目を向けると、小さな人影があった。


「ばき。かあさんはへやにいるの?」

「……」


バキは驚きに身を凍らせていた。
まさかまさかまさか、目の前にいるのはあの迦陵様、なのか?
可愛らしい格好をして同じ格好をした可愛らしい少女と手をつないでいる。

ありえない……! 


「ちょっと。きこえないのそれともそのくちはかざりなの? さっさとこたえなよ」

「……自室におられます」


ちょっとバキは安心した。
まさか毒舌を聞いて安心する日がくるとは思わなかった。
迦陵はそのままさっさと歩きだそうとしたが。


「あ、ねぇまって」

「……なに」

「おにぃさん。おにぃさんもいっしょにいこう?」


クイッと迦陵を引き留めたルイナは、側に佇むバキに視線を向けてそう言った。
そしてあいていたほうの手でバキの服の裾を掴んだ。
新たな展開に背後の人たちは大いに色めき立った。
まさかここでバキさんまで巻き込むとは、この少女、中々侮れない。
しかしバキはどう返答したものか悩んでいた。
少女の言葉を聞いて、目の前の少年は明らかに不機嫌そうな顔つきになったからだ。


「なんでこいつまでつれていくの」

「だっていま、このおにぃさんのなまぇ――」


ぱしん


「むぐ」

「? 私の名前がどうかいたしましたか?」

「なんでもないよじゃあね」


そう言って迦陵はルイナの口を手で覆い、そのまま引きずって行ってしまった。
バキはよく分からないままにその場に立ちつくした。
そして目の前をササッとコソコソと大人たちが通り抜けていくのを見た。

なるほど、気配の原因はこれか

なにやら微妙に楽しそうで嬉しそうで幸せそうな雰囲気が漏れている。
気配は完璧に消しているのに、感情が駄々漏れだ。
せっかくなので、バキもこの一団に入ることにした。
巻き込まれると大変な気もするが、こうして見ている分には随分と楽しそうだ。
こうして少しずつ少年少女の背後の気配は大きくなっていったのだった。






「ぷは」

「よけいなこといわないでよ!」


ルイナを引きずっていた迦陵は物陰に隠れた。
本気で隠したいことなのか、紋章を使って音が漏れないようにしている。
もの凄い無駄遣いだ。


「あーあ。おにぃさんとはなしてみたかったのに」

「……」

「まぁいっか! はやくつれていって〜」

「はぁ」


迦陵は諦めたように歩き出した。
そしてようやくある扉の前に着いた。


「ここにいるの?」

「うん」

「なんか、いやなけはいもするけど……」

「ああ、みればわかるよ」


そう言って迦陵は扉を開けた。
それが新たな始まりの幕開け。









【勝手にバキ設定】
バキくんは18歳くらい(原作では31歳)
おそらく上忍(中忍になったのが10歳らしい)
才能がある青年だと有名☆てことになってます。
火影とカカシみたいに、風影とバキ、みたいな関係を希望!








←  ■  →