「ひどいひどいひどい!! せっかくシリアスにすすめてたのに……いのちをすてるかくごもしてたのに……だってぱぱもままもすきだったから、いっしょうけんめいなやんだのに! おとうとだってうまれてくるから、おねえちゃんとして、るぅも、るぅもがんばろうと、おもったのに……!!」

「ああ、泣かないでルイナ。可愛いルイナ、そんなに泣いたら目が溶けちゃうよ」

ルイナはぶつぶつと舌っ足らずな口調で呟きながら泣き始めた。
その様子を見て焦ったようにミナトはその小さな身体を抱き上げ、よしよしとルイナを慰めた。

里を救った小さな英雄の姿に、皆一様に困惑の表情が隠せない。

だってルイナををあやしているミナトの足下に、さっきまで命を賭けたマジバトルを繰り広げていたミニチュア九尾がのんびり寝転がっているのだから。 










「あ」


うっかりはじまりの紋章の最終奥義を出してしまったルイナは、目の前でプスプスと煙を上げて地に伏した九尾の姿に我に返った。 


「……」
「……」
「……」
「……」


側にいたミナトと暗部たちは呆気にとられてその光景を見ていた。
周りにいた忍たちも、ぽかんと口を開けて見ていた。 


「……よわ」 


ぼそっと呟いたルイナの声が、悲しいことに辺りに響き渡った。 


「みおー!」

「どうしたー!!」

「なにがあった!?」


そして辺りには聞き慣れぬ(幼くて可愛らしい)声が聞こえてきた。
そして仄かな閃光と共に三人の幼児が現れた。


「あ、みんな!」

「……なんできみたちもここにいるの」

「それはるっくにもいえることだろ?」

「ああ、やっぱりみんなもここにいたんだね」


「さっき、ちからをつかっただろ?どうしたの」

「もしかして、あそこにたおれてるやつ?」

「あ、うん。きゅうびっていうんだって。」

「へーこれが〜」


しげしげと九尾の残骸?に視線を向ける幼子たち。
つんつんとつついたり、ぱしぱしと叩いたりしている。
子どもと戯れる?九尾……なかなか見れない光景だ。
人々は全力で現実逃避に勤しんでいた。
おそらく危機(九尾)が去ったので、ぼんやりとしていられるのだろう。 


「そういえば、みおはこのはにうまれたの?」

「うん。ほかげのこだよ」

「え、そうなの!? おれはらいかげのこなんだ」

「え、てぃるも? おれはみずかげのこだよ」

「ぼく、かぜかげのこ」


なんだか話を聞いている限り、もの凄いメンバーだ。 
しかし少年たちの言葉を聞いて、少女は悲しそうに俯いた。


「え、じゃあみんないっしょにはいられない、ね」

「だいじょうぶだよ、みお」

「ああ」 

「……ふん」


悲しげに言う少女に、少年たちは安心させるように微笑んだ。
一名そっぽを向いているが。 


「かんたんに、ぬけにんにはなれないよ?」 

「はは、ちゃんとさとをぎゅうじってからくるよ」 

「そんなこともわからないの」 

「あんしんして、みお。すぐにかたづけてくるからね」 


お、おそろしい……!! 

幼い子どもがする会話じゃない!でも、この子たちならやり遂げそうで怖い!!
人々の心の声は皆一緒だ。

この子たちが大きくなる頃には、五大国の仲も良いものになっているかもしれないな…… 

ミナトは内心呟いた。
だが内心のつもりがうっかり外に出していたので、聞いていた暗部たちは神妙そうに頷いている。 


「あ、ひとがくる」

「ほんとだ」

「じゃあ、かえろうか」

「うん。またね」

「「「じゃあ、またねー」」」


そう言っていきなり現れた子どもたちは、同じようにいきなり消えてしまった。 



「四代目!!」



そう言って現れたのは、暗部の医療班の者だった。


「……どうしたの?」

「――!? あ、はい。それが、謎の光により負傷者の怪我が一瞬で消えてしまいました」 


なんだか疲れ切った様子のミナトが聞き返すと、一瞬固まっていた医療班の者は答えた。
その驚いた目線はもちろん、地に伏した九尾に向けられていたのだが。 


「怪我が、消えた?」

「はい。ここに来るまでに見た限りでは、里中の負傷者の傷が癒えているようです」 

「……それはどんな光だったの?」

不可解な言葉にミナトが聞き返すも、医療班の者は同じ言葉を返すだけだ。
謎の光
なんだか嫌な予感がするも、聞かないわけにはいかなかった。 


「はい。私もその光を身に受けたので、その印象を語らせて頂きます。とても暖かく心地よい、柔らかな緑色の光でした」


緑色の光
そう聞いて思い出すのは、九尾の火炎を遮ったあの時の光だ。
自然とミナトと暗部たちの視線が、幼子のほうへ集中した。


「あ、きゅうび! さっきのしつもんにこたえてよ! なんでねてるの!?」


ルイナはそう理不尽なことを言って九尾をばしばしと叩いている。


「! なぜ子どもがこんなところに――ハッ! 九尾を起こしてしまっていいのですか!? 今の内に何か対策を」

「!」

「!!」


そういえばそうだった!!

度重なる不測の事態のせいで、すっかり気が動転していたようだ。


「あ、おきた」


まじで!?もうちょっと待って!! 










迂曲左折暴走迷走を経て、九尾はルイナのペットに収まった。
あの謎の緑の光のおかげで死傷者がいなくなったおかげである。
どうやら死にかけていた者も問答無用に癒してしまったようだ、はじまりの紋章は。
どんだけ出血大サービスなんだ。
(注:これはギャグです。本当ならこんなことありえないと思います)
里の損害は甚大なものだったが、九尾が里を襲ったのにも正当な理由があったようだ。
むしろ里を壊滅させられても、文句も言えない理由だったらしい。
九尾が出していた負傷者にしても、飼い主?のルイナが責任を持って癒していたので(そんな理由じゃなかったけど)なんとか許された、という一幕である。

死傷者もいない、脅威も去った。
(損害は計り知れないが、また新たに作ればいい!)
里中が喜びに包まれた。

しかしそんな中一番不満だったのはルイナだった。

実は彼女、大好きなパパとママと生まれてくる弟を救うため、命を捨てるほどの覚悟を決めていた。
それほどの威力だったのだ、九尾は(その時は)
紋章の力を使って、自身は消滅しようとも、みんなを守ろうと思ってた。
思ってたのに……


『母よ、どうした。ハラでも減ったか』


なんか九尾には懐かれた。
お前の母になった覚えはない!

紋章の力はみんなにバレた。
畏怖の眼差しも尊敬の眼差しもいらない!!
(聞かれると説明するのが面倒くさい)



もう、幼い感情に任せて大泣きするしかなかった








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