「で、結局、ミオがCDの入ったPSに頭ぶつけて、額に宿してた門の紋章が暴走して、なぜかこうして俺たちは主人公としてこの世界に来たと、そういうこと?」
「申し訳ありませんでした……」
ベッドの上でミオが正座をして三つ指ついて頭を下げた。
めちゃくちゃ背後のオーラが暗い。
(場所が悪かったせいで違う意味にもとられそうな光景である)
「いや……転けた原因が俺とルックの言い争いにあるみたいだしね……」
「……」
ティルとルックはお互い別々のほうを向いて遠い目をした。
「俺はミオの傍にいたのに受け止められなかったし……誰も悪くないよ、ミオ」
「うん……」
「4人ちゃんと居るんだからどうにかなるだろ」
「そうだよ、ミオ。門の紋章で来たってことは、帰れるだろうし」
いまだ暗い様子のミオに、3人がそれぞれ声をかける。
それを聞いて、ミオは少しずつ気持ちを浮上させた。
「みんな、ありがとう」
にこりと笑うミオに、3人とも安心したようだ。
(いつまでもベッドの上であんな格好させてたら視覚の暴力だ)
ミオが体勢を整えるのを目に入れながら、改めて彼らの話し合いは続く。
「どうすれば帰れるかな?」
「この世界で紋章を使うとなると、ちょっと辛いかもしれないな」
「ラズを回復させる時に俺たちも何回か倒れたしね……」
「え、そうなの?」
難しい顔をするルックと遠い目をするティル。
全身打撲状態だったラズロの傷を癒すため数回紋章を使用した結果、彼らは数回倒れては復活していたのだ。
それを聞いて申し訳なさそうにしたのがラズロである。
「苦労をかけたね、ごめん」
「いや、こっちこそ。君の体力を随分奪ってしまって悪かったよ」
「ごめんね、ラズ」
しかし数回に分けて紋章を使われたせいでラズロの体力をかなり消耗してしまったらしい。
珍しく素直にルックが謝罪の言葉を口にしている。
紋章に関しては4人の中で飛び抜けているルックですら手こずったなら、他の3人が紋章を使うのはさらに難しい。
「ん……やっぱ門の紋章はうんともすんとも言わないよ」
ミオは額に手を当てて唸る。
「じゃあ何か分かるまでこの世界で生活してみるしかないか」
結局彼らの話し合いは(彼らの体内時間では)3時間ほど行われた。
内容以上に多かったのはやはりティルの冗談とミオとラズロの天然会話とルックの突っ込みだった。
(1対3で中々分の悪い戦いだったが、ルックは善戦した)
どうやらミオが牧場物語を好んでプレイしており、その知識を3人に話した。
(ティルはミオがプレイしているのを横で見ており、若干知っていたようだが)
牧場物語……それは3つの要素を軸にした新感覚アクション&シュミレーションゲーム!
「荒地を開拓し作物を育て動物達と触れ合う」
「自然と親しみ街で人々との交流を楽しむ」
「牧場を中心とした箱庭世界でほのぼのとした生活を送る」
(by 公式サイトの素敵な紹介)
ラズロ「敵はいないの?」
ルック「魔物は??」
ミオ「い、いないよそんなの!」
ティル「そんな波瀾万丈な牧場経営あったら可笑しいだろ」
確かに4人の感覚なら有り得る危険な経営だが、これは魔物のいない(いるのは動物のみ)世界の話だ。
しかも「ほのぼの」をテーマにしているゲームに敵や魔物がいるってぇどんなほのぼのなんだ。
(後々敵牧場主や魔物を倒し飼育するような牧場物語も登場することは、彼らが知るよしもない)
ルック「なんだ、随分平和な世界だな」
ラズロ「牧場を大きくして、街の人と触れ合うだけ?」
ミオ「……だってそういうゲームだし」
ティル「まぁ確かに騒動の「そ」の字もないのんびりしたゲームだったよ」
拍子抜けするルックとラズロにミオは不満気。
ティルは眺めていたゲーム内容を思い出して、ほのぼのした顔をしている。
しかも彼らはなぜか牧場物語の主人公ポジションにいるらしいことに気づいた。
(そもそもティルは薄々気づいていたからこそ、この世界にも気づけた)
ティル「僕たちがここに来た時、いきなりこの牧場の前に立っていたよ」
ルック「そういえば『キミたちのおじいさんの牧場』って言ってたね」
ミオ「え、じゃあ……」
ラズロ「? どうしたの?」
ラズロの手を引いて鏡の前に立ったミオは驚きに目を染めた。
そこで初めてミオは己の姿を確認したのだった。
主人公格なのは、ティルとミオっぽいということが分かり……。
ティル「たぶん、俺とルックが兄妹?で」
ミオ「僕とラズロが兄妹?なのかな」
ルック「きょうだい……」
ラズロ「じゃあ俺がミオのお兄さんだね」
兄妹?なのはどっちが上か分からないからであるが、おそらく兄と妹の関係に落ち着くのは必須。
(力関係的にも、体格的にも)
ミオ「でもおかしくない? 主人公が4人って」
ルック「そもそもここに居る時点で変なんだから、何があってもおかしくないんじゃないの」
ティル「せっかくだからこの牧場を大きくしたいね」
ラズロ「そうだね。これもなにかの縁だし」
そこでゲームの持ち主であるミオによる牧場物語講座が改めて開かれるのだが。
ルック「そ、それは僕にも適用されるの!?」
ミオ「さぁどうだろう?」
ラズロ「…………」
ティル「…………」
問題はガール版の最終目標が『結婚』であることだった。
しかし兄たちの目を盗んでそれが出来るのかは疑問だが。
ミオ「ルック、可愛いから気をつけてね」
ルック「っな! ……か、可愛いのはミオも一緒だろ」
ティル「これから兄として頑張ろうな、ラズ」
ラズロ「そうだね。可愛い妹のためにも」
ほわほわした雰囲気を醸し出しはじめた妹たちに、兄の決意は固まった。
結論。
とりあえず牧場生活やってみよう
やっと序章終わり。会話に状況説明を盛り込もうとしたらこんなに暴走してしまいました。
これからやっと牧場生活が始まる(はず)です。
でもかなり満足感を感じているので、続きは気が向いた時になりそうです。
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