はぁ……
聞こえてきたため息に、陽子は身を強ばらせた。
はぁ……、しくしく
しかし続いて聞こえてきたのは予想していた低く感情の見えない声ではなく、重ねて溢されるため息とすすり泣く音。
これは……またため息&泣き声の夢か!!
陽子がズーンと落ち込んだ。
夢の中だが気合い入れて自分の身体を思い起こして、しっかりと四つんばいになって落ち込んだ。
(夢の中で己の身体をしっかり再現させるって、結構大変なんだぞ☆)
しくしくシクシクしくしくシクシク
延々と聞こえてくる悲哀に満ちた泣き声に、陽子も泣きそうになりながら辺りを見渡した。
いつもならただ泣き声が聞こえてくるだけなのに、今日はしっかり己の身体の感覚を感じている。
そして、暗闇ではなく辺りに満ちているのは薄明るい真白の空間だった。
これは……もしや解決のチャンスではないか!?
まさか陽子自身が今の現状に憂い、心の奥底では泣き叫んでいるのでこんな夢を見ている……とは全くこれっぽっちも思わない!(超断定)
ならば何か外的要因があるはずである。
これまでは延々延々エンエンエンエン……っと暗闇で泣き声を聞くしか出来なくて何も出来なかったが(ホントこっちが鬱になりそうだった)、これは今までにない変化である。
陽子は歩き出した。
とりあえず泣き声の方に向かって。
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しくしくシクシク
「そうか、つまり待ち人が来ないから悲しんでいるのだな?」
しくしくしくしく――はい
泣き声に隠れるように小さな返事だったが、陽子にはしっかりと聞こえた。
それを聞いて陽子はうーんと悩む。
「その待ち人がどこにいるか知っているか?」
しくしくシクシクしくしく
「(無言……つまり知らないのか) 君が待ち人を迎えには行くことは出来ないのか?」
シクシクしくしくシクシク
「(なるほど、待つだけか。それは辛いかもしれないな) その人とは、いつ会う約束をしていたのか覚えているか?」
しくしくシクシクしくしく
「(うーん。それすら知らないのか。八方ふさがりだな)」
会話中であろうとも泣き続けるナニカの前で、陽子は困ったように立ちつくした。
目の前にふよふよと浮いている光の玉、そこから泣き声は響いてくるのである。
ぼんやりと光を発しているのでどんな形をしているかは分からないが、なにやら神聖な気配を感じる。
でも、勝手にこちらの意識と同調させて、延々泣き続けるって酷くない?
陽子は内心、誰にも言えない愚痴をこぼしながらそっと吐息を溢した。
(おそらく起床と共に使令たちに愚痴ることになるだろう)
シクシクしくしく――みこ……
陽子はハッと顔を上げた。
泣き声が泣き声以外の言葉を発するのは希(というか自分から話し始めるのは初めて)なので、聞き漏らすわけにはいかない。
(そしてさっさと解決して安眠したい!)
みこ……みこ……わたしのみこ……
どうしてわたしのもとには、きてくれぬのだ……
ナルホド、この泣き光さん(仮名)の探している相手は【ミコ】さんというのか。
陽子は必死に光に耳を近づけながら、うんうん頷いた。
嘆きの声は、すすり泣きのせいで喉を痛めているのかめちゃめちゃ小さな声だった。
みこ……みこ……わたしのみこ……
どうしてこちらにきてくれぬのだ……
わたしのみこ……わたしのみこ……
みこのはちようも、ちゃんといるのに……
われはちゃんと、こたえたのに……みこのこえに、こたえたのに……
ん? アレ??
陽子はそっと光から離れて後ずさりをしながら、思考をフル回転させていた。
な、なにかこれはイヤな予感が……
長年の時をかけて鍛え抜かれた面白レーダーがビンビン反応しているのを感じるがしかし、同じくらい、いやそれ以上にヤバイぞレーダーもガンガン反応しているような……
「あ、用事を思い出した! というわけで泣き光さん(仮名)! さようなら!!」
……みこ……
み つ け た ……!!
「――っ!!」
唐突に白い光に包まれた。
空間の全てが発光し、そのまま陽子の身に降りかかるようにして集まってくる。
白い白い光に愛撫され、陽子は己が意識を失っていくのを感じた。
なんでぇぇぇええええぇぇええぇえええ!?
陽子の絶叫は空間を振動させることなく、全て光に包まれて消えていった。
律儀にもさよならの挨拶をしたせいで泣き光さん(仮名)の甘い罠(違)に捕まった陽子は光とともに姿を消した。
陽子様、出発!笑
……すでに廃棄の可能性もある、とても可哀想な序章です★