少女が笑っていた。
真っ白で透明で、とても清らかな笑みだった。
そこにこもった想いが聞こえてきた、伝わってきた、響いてきた。
好き、大好き、大好きなの
とても同じ人間とは思えなかった。
まるで神の慈愛の微笑みを垣間見ているようだった。
そして最も幸村にとって衝撃だったのは、
その少女が一転して浮かべた光弾けるような笑顔を見て、
側にいた少女が、泣きそうな顔で甘く優しく微笑んだことだった。
その笑顔こそ幸村が望んでいたものだった、のかもしれない。
泣きそうに歪んでいたけれど、まるで世界の全てを受け入れたような笑み。
やっと、こっちにきてくれた
意味も分からず、幸村はそう思った。
頬には一筋の涙がこぼれていた。
ほどなくして、ぼんやりとしていた幸村は覚醒した。
周りにはいまだにぼんやりとしている者や、意識の無い者まで存在した。
「目覚めたか、精市」
「蓮二……」
レギュラー陣の中でも、自分は早いほうに覚醒できたようだ。
意識のしっかりしている者は柳しかいなかった。
いまだ試合中の二人とその審判を除いて、いまだに意識がしっかりしている者は少なかった。
「幸村、唐突だが、覚えているか?」
「……? どういうことだい?」
「あそこにいた4人のことを覚えているか?」
「! 当たり前じゃないか、いったい何を――」
「他の方に聞いたんだが、覚えていなかったんだ」
「……え?」
「なんだか、よく分からないことは言っていたのだが……」
目覚めた柳は自身とレギュラー陣に目立った負傷がないことを知ると、とりあえず現状把握のために動き出した。
意識はなくても負傷さえなければ、まぁ大丈夫だろう、というわけである。
案外大雑把。
そこで意識を取り戻した人たちに話を聞いてみたのだが。
そんな人たち、いたか?
それよりこの試合は白熱していていいわね、がんばってね。
え、見ませんでしたよ。
そんな人たち、見たら忘れないと思うんだけど……。
すまんねぇわからんわぃ。
あ、でもそういえば……
「真田さんは、大好きなおじいさんにそっくりなんですって」
「……はぁ?」
幸村らしからぬ声が漏れた。
しかし、これまでの話を聞いて真剣になっていた分、拍子抜けした。
SFか、果てはファンタジーか、と変に気を回していたのがいけなかったのか。
「それは、どういう意味なんだ?」
「俺にもさっぱり分からん」
「大好きだった、じっちゃん。
今も、大好きな、じっちゃん。
僕、みんなといれて、幸せ……そういったんじゃ」
「! 仁王」
「起きたか」
「なんなんじゃ、あの女は……」
いまだに若干意識が朦朧としている様子の仁王は弱々しく呟いた。
日頃の仁王にあるまじき姿である。
「それにしても、仁王には記憶があるのか」
「そうだな。一体どういった基準なのか……」
「……何の話じゃ?」
それからすぐに一斉に人々は目を覚ました。
まるでさっきの異様な光景は夢であったかのようであった。
その中でもしっかり記憶を残している者が、幸村、柳、仁王の3人だけだった。
その他のレギュラー陣は朧気に覚えてはいるようだが、あまりそのことに重要視していない様子であった。
真田も覚えてはいたが、問題の場面中は試合中だったこともあり知らなかったようだ。
記憶が残った原因は元々彼らを知っていたから(幸村、真田、柳)と彼らについて多くの認識があったから(仁王)ではないかと予測された。
実は仁王は彼らが試合会場に現れたときからそれとなく観察し続けており、幸村に妹と聞いた際にはそれなりの存在として自身の中で確定させていた。
そして問題の場面でも読唇術でしっかりと会話を把握していたらしい。
さすが多才な男である。
その他のメンバーは幸村に妹と聞いた直後であったことから、記憶が若干残っていたものと思われる。
その証拠に、仁王に劣らず気にしていた丸井とあまり気にならなかったジャッカルでは、覚えている事に多少差があった。
最後の学校で最も大きな珍事件を起こした4人組。
そんな彼らに興味を持った者がいることなど知るよしもなかった。
幸村は安堵を。
柳は疑問を。
仁王は……自身にも名付けようもない複雑な想いを。
それぞれが胸に刻みつけていた。
おまけ
「ラズロ、立ち止まってどうしたの」
「あ、うん。ごめん」
「……どうしたの」
「いや、なんでもないよ。心配かけてごめん」
「気落ち悪いな。さっさと帰るよ」
「(相変わらずだよなールック)」
しかし、こっそり紋章使ったけど大丈夫かな?
今はもう見えない試合会場のほうを見て、孔也は思った。
実は慌てているように見せかけてしっかり冷静だった孔也である。
恵菜の様子に危機感を感じつつも、このまま止めない方がいい結果になるだろうと勘が告げていた。
その通り、妖華にとって最高の結果を残せたと思う。
でも……なーんかイヤな予感がするんだよな……
ごめん、恵菜。
跡部邸がどの方角にあるか分からないが、孔也はひっそりと謝った。
たぶん火の粉が降りかかるなら、あの笑顔を表に出してしまった恵菜だろうと思いながら。
おまけのおまけ?
バタンッ
「え」
「ちょ、ルック! ドア閉めるって酷くない!?」
「ルックー!!!!」
「うるさい大声で呼ぶな!!」
最後は暴走しすぎて紋章で強引に締めました。
こんな使い方出来るのか謎ですが…出来るということにしておいて下さい↓
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