新しく家族になったリオウは、あまり笑わない子だった。
いつも無表情で何を考えているのか分からないし、言葉も少ないとても静かな子。

でも、私は知ってる

リオウが笑った顔は凄く可愛くて、それを見たらとても幸せになって心がほかほかするの。
それにいつも無表情と言っても、それはただ顔の変え方を知らないだけなんじゃないかな?って思う。
だってリオウの瞳はいつもきらきらと輝いていて、よく分からないけど、その輝きにはいろんな光があると思うんだ。
そういえば、ムクムクとじーっと見つめ合ってる時なんか本当に面白い。
だってムクムクはムームー言っててリオウは見つめているだけなのに、会話が出来ているみたいに見えるんだもの!

そうそう、ムクムクが本当は魔物だって聞いてびっくりしちゃった!

ゲンカクじいちゃんが言ってたけど、確かむささびって魔物だったはず。
でもムクムクはリオウとずっと前からお友だちだったみたい。

むささびは確かに強い魔物じゃないが、魔物が人と共生しているとはなんと不思議な……

じいちゃんがそう呟いてた。

『きょうせい』ってなんだろう?

とにかく、ムクムクはとても不思議な魔物で、リオウの友だちだってことはわかった! 





リオウがこの家に来てから、はじめはリオウがふらふらしていていつも大変だった。
朝寝坊はするし、ご飯の時間に帰ってこないし、稽古の途中にいなくなるし。

でも私はお姉ちゃんだから、しっかり面倒を見なきゃね!

そう思ってリオウのことをしっかり見ていた。
ああ、そのおかげでリオウの瞳がいつも輝いていることが分かったのかもしれない。
朝寝坊したのを起こした時には、瞳の奥底でまだ寝たい!と言っているような気がしたし、森の中に佇んでいた時には優しげな瞳で木々を見ていた。
そして稽古の途中でゲンカクじいちゃんと一緒に探しに行った時は、リオウが小鳥のさえずりと一緒に、とても綺麗な声を出して歌っていた。
私もじいちゃんも驚いてじーっと見つめるしか出来なかった。
(じいちゃんは武術のことは厳しいから、稽古の途中でいなくなったことに凄く怒ってたのに)

リオウの口から流れ出る、不思議な声と旋律
(聞いたことない言葉で、聞いたことのない歌)
一緒に歌いながら、頭上を羽ばたく小鳥たち
(楽しそうに歌い、嬉しそうに舞っている)
リオウの周りには、舞い落ちる羽根が漂い
(ふわふわとリオウを取り巻いて、まるで離れたくないみたい)
彼らを囲む木々は風に揺れ、さやさやとさざめく
(まるで囁くように歌っている)

リオウはやっぱり無表情だったけど、いつも以上に瞳がキラキラと輝いていて凄く楽しそうに見えた。
なんだか雰囲気も生き生きとしているように見える。

あ、いつもこうやって生活してたんだ

私は思った。
いつも朝寝坊した時間に起きて、たくさん遊んで、森の中でぼーっとして、小鳥たちと歌いながら生活してたに違いない。
だからいつもちょっと大変そうに生活してたんだ。
じいちゃんもそう思ったのかな?怒った顔は全然してなくて、凄く眩しそうな顔をしてリオウを見てた。
(最初に驚いた時に、怖い顔は治っちゃってたけどね)

うん。そうだね、とっても眩しい

今のリオウはなんだか全身から光を出してるように見えるんだもん。
無表情なんだけど、なんていうか……そう!なんか綺麗な顔に見える。
この前笑った時は可愛かったけど、今はすっごく綺麗だな。 





ある日、じいちゃんがはじめて夜中に家を出て行ってしまったことがあった。
私が一緒になってから、はじめてのことだった。
じいちゃんはすぐ戻るからね、と言っていたけど、凄く凄く怖かった。
広い家にひとりぼっちで、とっても寂しかった。

まだかな、はやく帰ってこないかな

そう思って道場の入り口で星を見ながら待ってた。
どれくらい時間が経ったんだろう。
ちょっとだけ眠くなってうとうとしていたら、ゲンカクじいちゃんが道場の庭に入ってくるのが見えた。

帰ってきた……!

嬉しくて眠たいのも忘れて飛び出した。
そしたら、じいちゃんは見慣れない子の手を引いていた。
無表情で、無口で、何を考えているのか分からない、私よりも小さい子だった。

この子が、私の弟!

じいちゃんにそう言われて、ビックリした。
家族が嬉しかったけど、昔のことも思い出して少し悲しくなった。
(早く、忘れなきゃ)
じいちゃんがその子と私を近づけたけど、気づかなかった。
でも、ふと、何かを感じて下を見ると目の前の子が、じっと私を見ていた。
真剣に、大切そうに見られて凄く驚いた。
(なんでだろう?無表情なのに目がそんな風に見えた)


「リオウ……です」


とても小さな声だったけど、その声はとても綺麗で、街でよく聞く私と同じくらいの子たちと全然違う声だった。
すーっと私の耳に入ってきて、ふわーっと広がっていった。

この子も緊張しているのかもしれない。お姉ちゃんになるんだから、私がしっかりしなきゃ!

そう思っていつもみたいにたくさん笑って、たくさん話しかけた。
そしたらね、リオウったら……

笑ったの!

ちょっぴりしか顔が変わってなかったけど、確かに笑ってた。
瞳は温かくて嬉しそうに光がこもっていたし、目をそっと細めて、口の端を少しだけ上げて、眉を柔らかく下げていた。
ふんわりとした笑顔で、その顔を見て私ったら驚いて固まっちゃった。
じいちゃんも驚いて変な顔をしてたけどね!

後から聞いたら、この時の笑顔が、リオウが初めて浮かべた笑顔らしい。
それって不思議なことだけど、でも初めての笑顔を私とじいちゃんに見せてくれたことがすごーっく嬉しかったんだから!

いつも無表情でぼーっとしてるリオウ。
だけど私はそんなリオウが大好きになっちゃった。
じいちゃんと同じくらい大切で、どっちも私の家族。
リオウは抜けているところがあるから、これからも、私がお姉ちゃんとしてリオウをしっかり守ってあげなきゃ!










物語の道筋であっても、道は人の心によって成されていく

リオウが二人を大切に想い

ナナミが二人を大切に想い

ゲンカクが二人を大切に想う

これが、そんな三人の新しい家族が生まれた時のお話。





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