「ふふふふふふ……出来た……!!」

深夜の厨房に響き渡る、喜びに満ちた声。
これこそがこれからの騒動の幕開けの一言であった。





「おっはよーリオウ!!」

そう言って遠慮もなく軍主の部屋の扉を開け放ったのは姉のナナミだ。
いや、こうやって遠慮無くこんなことをやってのける人間は、もうナナミしか居ないと言ってもいい。
リオウの部屋の前を警備している者だって、止めることはない。

「リオウ? まだ寝てるの??」
「起きてるよぉ」

リオウは起きてると言いつついまだに眠そうな目でナナミを見ている。
顔は無表情なのに瞳だけぼーっとしているなんて、けっこう器用だよね、とナナミは思った。
――ハッ!いけないいけない、早くしないと!
あまりにも可愛いリオウを見たせいで目的を忘れるトコだった!と思い直したナナミはさっそく行動に移した。
まだ眠たそうなリオウにキュピーン☆と視線ロックオン!

「ねぇ、リオウ――」





今日は週に一度にある、幹部たちの朝食会の日だ。
なぜ殺伐とした戦時中でしかも軍というこれまた殺伐とした(はずの)集団にこんな可愛らしい行事があるのか。
それはまたの機会に語るとする。
とにかく幹部の皆は何を置いてもこの朝食会に参加していた。
仕事?稽古??睡眠???ナニソレ美味しいの?というノリだ!(どんなノリだ)
とにかくこの日は城の雰囲気も朝から華やぎ、幹部たちはウキウキと部屋に集まるのである。
まぁ中には無理してしかめっ面してる人もいるが、オーラがピンク色なのだからバレバレだ。
(誰かはご想像にお任せします☆)

「おはようございます」
「おはよう」
「っはよー」

それぞれ性格に合った挨拶を交わすと幹部の面々は席に着く。
徹夜の仕事明けで微妙に顔色が悪い者や、酒が抜けきっておらず眠そうな者、逆にすっきり目覚めて穏やかに微笑む者や、ピシーと背筋を伸ばしてしっかりした様子の者など、様々な者がその場には集まっていた。

「あら? 珍しいわね。リオウ殿とナナミさんが遅れて来るなんて」
「ああ、本当ですね。いつも早めにいらっしゃっていたようですが」

いつもと違う様子に気が付いたのは、さすがというか副軍師コンビのアップルとクラウスであった。
実は本当なら一番に気づきそうな正軍師は微妙通り越して正直マジで顔色が悪かった(すでに土気色だ)
この朝食会のために色々と無理をしたようである。
しかしみんなはつっこむような愚行は犯さない。
なぜならこの朝食会をそれほど大切に思う気持ちは皆一緒だからである。
むしろ『お前、中々やるな……☆』と賞賛を送りたいほどだ。
話を戻そう。

「まぁ本当ですね。いつも楽しそうにみんなが来るのを待ってらっしゃったのに」
「何かあられたのでしょうか?」
「それは良くないですな」
「……なんで言い出しっぺのアイツがいないんだよ」
「はは、落ち漬けって。すぐ来るんじゃないか?」

みんなリオウの不在に気づいてそれぞれの会話を中断させた。
大半の者は不安そうにリオウとナナミの席を見ている。
一人ルックは苛立たしそうにリオウの席を睨み付け、フリックが苦笑しながらそれを宥めている。
ルックははじめの方こそ激烈強制参加(“激烈”あたりに本気を感じて欲しい)だったが、今では本人が結構楽しみにしていることをみんな知っている。
……本人には言わないが(そんなツンデレに爆弾を投げ込むようなことはしないような大人ばかりだむしろ生暖かく見守られていることをルックは知っているのだろうか?)
一人沈没している熊はみな放置だ。
勝手に酔い潰れているような男に用はない、ということである。
こんな大切な時に酒気を帯びているなど迷惑千万だァア!!
(このことに関してはみんなシビアだ鬼にもなる)



バッタゥゴーーン!!



「ごっめんなさーい!」
「……ごめんなさい」

扉を大破させそうな勢いで登場したのは待ちに待ったリオウとナナミだった。
ナナミは大声で謝りながらリオウの手を引いている。
リオウもしっかりした声で謝罪をして手を引かれるままに席のほうへ行った。
心配そうにしていた人々は一気に華やいだ表情を浮かべた。
我らがアイドル軍主のやっとの登場である。(アイドル軍主ぅ!?)
我々を待たせて不安にさせてから登場するなんて、また一段とそのレベルを上げたようだ。
(この軍は本当に大丈夫なのかこんな思考回路の幹部に牛耳られて…)
元気な様子のリオウににっこにっこと微笑み頬を緩ませている。
誰も扉の異様な鳴き声(それほどの怪音だ)につっこまないのか。

「皆、そろったようだな」

いつの間にか奇跡の復活を遂げたかのように平然とした様子のシュウがその場のみなに告げた。
すごい、さすが兄さん!さっきまでの顔色が嘘みたい!!……まだ手は真っ白だけど。
隣ではアップルが尊敬の眼差しで兄弟子を見ている。
そう。シュウは可愛いあの子の前ではカッコイイ姿で居たいと思って無理矢理顔色を変えているのだ。(そんなバカな……)
インテリ頭脳勝負系のくせに顔色変換能力という特殊能力を存分に発揮している。
おそらくもう少ししたら手も健康的な色に強制回復させるのだろう。
そんな兄弟子にそそぐアップルの憧れ光線に迷いはないむしろ熱い。
(……え、貴女もそんな能力欲しいの本当に?)

さて、兄妹弟子のプチドラマ中継の間にも、部屋に次々と食事が運ばれてきた。
シュウの声が合図になっていたようである。










これが私たちの日常です
(毎朝だって会いたい愛しの軍主と朝食を共に)


 


それぞれの席の前に芳しい香りの料理が並んでいる。
みんなリオウを見つめて彼の合図を待っていた。
『いただきます』の合掌の合図をするのは軍主であるリオウの役目だからだ(…給食かよ!)

こうして第○○回朝食会の幕が上がった。






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